ひとつ、……ふたつ。
パラパラと小さな音が聞こえたあと、すぐに大きな歓声とともに割れんばかりの拍手が鳴り響く。
わたしたちの一つ目の公演は、大成功で幕を閉じた。
劇を見てくれた観客の人たち一人一人にお菓子の詰め合わせを渡しながら見送ったあと、幕を閉じた舞台の裏側で、今日の反省点と明日の確認をしていた。
「このあとは、各クラスの出し物に参加したり、担当に当たってない人は自由時間。各々好きに過ごしてくれ」
各担当で気になることなど、明日の劇のために引き継ぎをしていると、ふいに誰かの声が静かに聞こえ始める。
「……けれど、この物語はここでは終わらないのです」
「えっ? ちょっと日向、いきなり何言い出すのよ」
ぽつり、ぽつり。
先程の、美しくそしてどこか儚い旋律を紡ぐような口調とは打って変わり、まるで怪談話でもするかのように、不気味さを交えた声で、再び彼は語り始める。
あなたは、不思議には思いませんでしたか
どうしてカグヤを
月の都の住人は迎えに来なかったのでしょう
普通のかぐや姫のお話ならば
彼らは有無を言わさず迎えに来るというのに……
「えっ!? ちょ、ちょっと!?」
そこまで話すと、カグヤ――もといキサちゃんの体が、未だについていたワイヤーによって引っ張り上げられる。
混乱状態のキサちゃんを余所に、ヒナタくんはそのまま話を続けた。
なぜならそれは
カグヤが月から追放された者だったからです
大罪を犯した彼には
月へと帰る資格は初めからありませんでした
『それは真実の方舟。あなたの一途な思いが、この船を動かす力となりましょう―――』
けれど、彼の邪な心が
とうとう月の船を止めてしまいました
「……えっ、ちょ。ちょっと待っ」
「止まった船は形を保つことさえできず崩壊ー。カグヤは月に帰ることなく真っ逆さまに落ちていきましたとさ。めでたしめでたしー」
「それのどこがめでたし、――――きゃあああ!!」
ものすごい勢いで奈落へと落ちていったキサちゃんの体は、あっという間に真っ暗な闇にのまれていった。



