『……お前などに、何がわかるというのだ』
『わかりません。貴方様のその思いを推し量ることなど、私にはできかねます』
『そうやって、私に取り入ろうとしているのだろう。貴様の魂胆など見え見えだ』
カグヤの声が震えていたのは
悲しさからか、寂しさからか
それとも、核心を突いてくる桃子への恐れか
『カグヤ様、決して桃子はそのような者ではございません』
半ば諦めようとしていたそのとき
鶴の声が、一際大きく響き渡ります
『桃子は、罠にかかっていた私を助けてくれました。そして、決して約束を破ることはありません』
『桃子は思慮深い女性です。決して、あなたを裏切ることはありません』
『桃子は、間違っていることをはっきりと言える女の子です。心から貴方様をお助けしたいと思っています』
そして、鶴が、亀が、兎でさえ
カグヤの力になろうと必死に声を上げます
『……申したところで、叶うものか』
『必ず。あなたの願いを叶えてみせましょう』
そうしてカグヤは力尽きたように項垂れ
ぽつり、ぽつりと話し始めます
『私は、元は月に住まう者。しかし、もう二度と、光り輝く都へは戻れぬのだ』
けれど……逢いたい
もう一度、逢いたい
逢って、言葉を交わしたい者が
夜空に浮かぶあの場所にいるのだと
カグヤは一人、大きな月を見上げました
そんなカグヤのそばに立ち
同じように桃子は夜空を仰ぎます
『幾年月経とうとも、必ず貴方をあの月へと帰しましょう』
彼らは契ります
いつか訪れるであろう日を夢見て――――……



