すべての花へそして君へ②


 蔑みの瞳で見つめてくるカグヤに
 桃子は緩く首を振りました


『カグヤ様、どうかもうこのようなことはお止めください』

『このようなこと……など、一体この私がいつ、どのような悪事を働いたというのだ』


 そして彼は
 これでもかというほど桃子に吐き出します


 こちらは、丁重に断りを入れたのだと
 それなのに、勝手に貢いでいくのだと
 あまりにも執念深く付き纏ってくるのだと
 時には命さえ狙われているのだと


 そんなカグヤに、桃子は問います


『お噂では、とても高貴な方からも求婚を受けているとうかがっております。……カグヤ様。あなたの心は今、何処に向けられているのでしょう――』



 観客すべての視線がステージに集まり、どこか寂しそうに語られる彼の声に、自然と耳を傾けられる。


「……すげえな」


 もちろん、舞台袖にいるわたしたちも、この世界にのまれてしまいそうになる。



『――……それを申したところで、何となるのか』


 鼻で嗤うカグヤに
 桃子は続けて話します


『そうしてご自身を傷付けておられる貴方様の、お力になりたいのでございます』

『……なにを』

『カグヤ様がお抱えになっている悲しみを寂しさを、少しでも安らかにして差し上げたいのです――――』



「……かんっぜんにかぐや姫関係なくなってきたな」

「うん。まあでも、何となくどうなるのかわかるかな」

「そうだな」


 少しずつオリジナルを交えていく彼が紡ぐ物語に、わたしたちは目を合わせ大きく頷き。


「それじゃ、本公演一番の大仕事、してきましょうか!」

「「ああ」」


 そうして黒衣三人組は、舞台袖から闇に溶け込むように、姿を消したのだった。