すべての花へそして君へ②

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『だから、言葉の代わりにちょっくら教えてやる』

『え? な、なにを……?』

『男をだ』

『え』


 このヘタレ変態教師は、可愛い生徒に車の密室で一体何を教えるつもりなのかと思ったけれど。先生が教えてくれたのは、なんだかとっても可愛らしい男像だった。


『男なんてな、正直言って頭ん中考えてることしょうもないことばっかだぞ。あと無駄に強がる』

 とか。

『心底甘えたくてしょうがない。でも、好きな女から甘えられるとそれ以上に嬉しい』

 とか。

『んで、寂しがり屋なんだ。女が思っているよりもずっとな』

 ……とか。
 それが先生自身だと思うと全然しっくりこなくて、つい笑ってしまった。そのあとすぐ叩かれたけれど。


『それと、これは全世界共通。万人が首を縦に振るであろうもはや決定事項だ』


 そして叩いた手がズシッと重く頭の上に乗っかってきたかと思ったら、彼は自信満々でこんなことを言う。


『どうしても勇気が出ないときは、その場の雰囲気に、空気に力を貸してもらやあいいんだよ』


 ――この世の中、【イベント】に勝る吉日なんて存在しねえ。

 ……いや、でもそれって、結局そんな日じゃないとキサちゃんに会いに行ける勇気が出ないってことですよね?


『それまでは、もうちょっと我慢して仕事頑張るかー』


 ま、そんな空気読めない言葉は、にやりと楽しげに笑う彼の横顔に免じて飲み込んでおきましたけど。



「おっし。次でラストだな」


 思い立ったが吉日――とはよく言ったもの。確かに先生の言ったとおり、その場に勇気をもらうのも悪くない考えだ。
 でも、あのとき教えてもらったそんな先生の作戦に、タイミングが合えばわたしも便乗してみたいなーなんて思ってはいても、現実は早々甘くない。生徒会の仕事もあれば、各クラスでの出し物もあるのだ。仕事に支障をきたしたり穴を空けるわけにもいかないので結局後回し。……なかなか難しいものだ。


「葵。ぼーっとして、どうかしたか」

「……ううん。あとちょっとだから気合い入れてた」

「……そっか。あんま無理すんなよ」

「うんっ。ツバサくんもね」


 そして劇はいよいよ大詰めに。