「あとはサイレントドラマとか。台詞覚える時間とかもいらないしいいかなって」と、わたしの心情を知ってか知らずか、平然としているヒナタくんは、続けてそんな提案をしてくる。
ピッタリとくっついた状態にどきどきしながらも、どこかいつもより積極的に見える彼に少しだけ違和感を覚えた。劇、やりたいのかな。
「……どうかした?」
「いや、なんだかやる気十分だなーって」
「そりゃね。みんな賛成してくれたけど、少なからずこうなったことに責任は感じてるし」
「それは、ヒナタくんが悪いわけじゃないよ?」
けれど、そう言うわたしに彼は「わかってるよ」とどこかおかしそうに笑った。
「あんた、言ってたでしょ去年」
「え? 何言ったっけ」
「言ったよ確かに。『全部やりたい』なんて無謀なこと」
「……言ったね、確かに」
満足げに頷いた彼は、「だから、できることなら劇にコスプレ喫茶の要素も入れたいんだけど」と、そうやってまた検索をかけ始める。
(無謀……か。そう思ってたから、覚えてたのか)
でも、ただ単純に嬉しかった。それだけは伝えたくて、腰に添えられた彼の指を、きゅっと握った。彼の顔は、ちょっと見られなかったけれど。
「……あんたさ、浴衣とかって持ってるの」
「へ? 子どもの時に着たのはあるけど、たぶんもうサイズが合わないからな……」
新調するのもなんだし、確かヒイノさんが持ってたから、当日はそれを借りようかなと思っていることを伝えると、ヒナタくんは顎に手を添えて何やら真剣に悩み始めた。
「……ヒナタくん?」
「ああ、ごめん」
「どしたの?」
「ちょっと考え事」
一体何を考えていたのだろうか。頭に疑問符がいっぱい浮かんでいたのか、首を傾げるわたしにふっと小さく微笑んだ。
「浴衣どんなのかなーって、ちょっと想像してみた」
「あ。……知りたい?」
「ううん。当日の楽しみにとっておく」
「それじゃあわたしもそうする」
「…………」
「ん? どうかしたの?」
「いや、さすがにヒイノさんの浴衣をしわくちゃにするのはマズいなーって」
「え? どういうこと?」
「……本当に聞きたい?」
「……ちょっと、やめておく」
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