すべての花へそして君へ②


「あとはサイレントドラマとか。台詞覚える時間とかもいらないしいいかなって」と、わたしの心情を知ってか知らずか、平然としているヒナタくんは、続けてそんな提案をしてくる。
 ピッタリとくっついた状態にどきどきしながらも、どこかいつもより積極的に見える彼に少しだけ違和感を覚えた。劇、やりたいのかな。


「……どうかした?」

「いや、なんだかやる気十分だなーって」

「そりゃね。みんな賛成してくれたけど、少なからずこうなったことに責任は感じてるし」

「それは、ヒナタくんが悪いわけじゃないよ?」


 けれど、そう言うわたしに彼は「わかってるよ」とどこかおかしそうに笑った。


「あんた、言ってたでしょ去年」

「え? 何言ったっけ」

「言ったよ確かに。『全部やりたい』なんて無謀なこと」

「……言ったね、確かに」


 満足げに頷いた彼は、「だから、できることなら劇にコスプレ喫茶の要素も入れたいんだけど」と、そうやってまた検索をかけ始める。


(無謀……か。そう思ってたから、覚えてたのか)


 でも、ただ単純に嬉しかった。それだけは伝えたくて、腰に添えられた彼の指を、きゅっと握った。彼の顔は、ちょっと見られなかったけれど。


「……あんたさ、浴衣とかって持ってるの」

「へ? 子どもの時に着たのはあるけど、たぶんもうサイズが合わないからな……」


 新調するのもなんだし、確かヒイノさんが持ってたから、当日はそれを借りようかなと思っていることを伝えると、ヒナタくんは顎に手を添えて何やら真剣に悩み始めた。


「……ヒナタくん?」

「ああ、ごめん」

「どしたの?」

「ちょっと考え事」


 一体何を考えていたのだろうか。頭に疑問符がいっぱい浮かんでいたのか、首を傾げるわたしにふっと小さく微笑んだ。


「浴衣どんなのかなーって、ちょっと想像してみた」

「あ。……知りたい?」

「ううん。当日の楽しみにとっておく」

「それじゃあわたしもそうする」

「…………」

「ん? どうかしたの?」

「いや、さすがにヒイノさんの浴衣をしわくちゃにするのはマズいなーって」

「え? どういうこと?」

「……本当に聞きたい?」

「……ちょっと、やめておく」


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