「……昔ね? 思ったことがあるの。婚約者候補についてのことで」
……どうして皇だったんだろう、って。
「別に、皇が悪いとかそういうことじゃなくて、敢えて皇にしたのは何でなのかなって」
確かに、理由を聞いて納得はしていた。けれど、そこに行き着くまでに何もなかったのだろうか。他にも名家はたくさんあったのに。
「けど違ったんだよね。何も無いわけなかった。わたしたちが知らされてなかっただけで」
「やっと、点と点が線で結ばれたよ」そうして彼女は、話の内容とは裏腹に、にひっとやっぱり楽しそうに笑う。
「守っててくれて、ありがとう。タカト」
その笑顔は、僕にはすごく……眩しく見えた。
――――――…………
――――……
『はっ。一度地に落ちた財閥が由緒ある血を求めるなど、甚だ穢らわしい』
『しかし、噂が噂だけにこの話、無下にするとどうなるか……』
『悪魔だの英雄だの、そんなものはただの噂話に過ぎぬわ』
『恐れ多いのですが、現に柊は疎か氷川でさえも、まるで吸い取られるかのように堕ちていっております……』
『ははは。己に悪魔が牙を剥くのも時間の問題だとでも? 我々も甘く見られたものだな』
差し詰め、その甘さを見抜かれていた、というわけだ。
【Luxurious】
豪華で華麗な名家の一人息子は、上辺だけの候補として利用され。
【Longing】
正規の婚約者候補は、ただ只管に彼女への憧れを抱き続け。
『……如何、なさいますか』
『……致し方あるまい』
悪魔に魂を売る他に、我々に未来がないのなら。
【Liar】
無駄に高い自尊心のせいで、予備の候補者は長い長い間、嘘を吐かれ続けた。



