すべての花へそして君へ②


 蓋を開けて見てみれば、父の手の平の上で転がされていたような気がしなくもないけど。でも彼女が、ゲームを終えても笑ってくれたから、きっとこれでよかったのだろう。
 とは言うものの、全く驚かれないのもなんだか腑に落ちない。彼女は、本当にどこまでを知っていたのだろうか。


「ねえ葵さん」

「隠し事するのと嘘つくのって、どっちが悪いかな……」

「え?」

「あ、……いやー、今個人的にこの言葉にすごく敏感というか、耳が痛いというか、胸が痛いというか……」


 あはは……と苦笑いをした彼女は、「いや、どっちも悪いか」と一人、ため息と肩を落とす。


「あなたにばかり言わせてしまうのはフェアじゃないね」


 けれど、次に視線を上げたときにはもう、彼女はしっかりと僕を見据えていた。


「そうするように指示したのはわたしだ、と言ったら?」

「……え」

「わたしの婚約を出しに、あなたの家の統率力や権力を買ったと。それが真実だとしたら、あなたはどうする?」


 そして、僕自身を試すような瞳で、そうやって揺さぶりをかけてくる。控えている二人の空気が鋭くなったけれど、それにはそっと手を上げて静めておいた。


「僕は、僕がこの目で見て、聞いたものしか信じない」

「今のわたしと過去のわたしが、全くの別人だとしても?」


 妙に彼女のその言葉が――ストン、と腑に落ちた。靄が一気になくなった気がした。
 そんなこと有り得るわけないのに、彼女に感じていた違和感が、ようやく拭えたような……。


「……きっと、わけがあったんだと思う」

「誠実さは認めるけど、判断を見誤ると一気に谷底に落ちるよ」

「そうなったら、そこからまた這い上がってくればいいよ」

「……素敵な考えだ」


 そうしてふっと笑った彼女は、そっと目を閉じて「(あなたたちならきっと大丈夫だね)」小さく何かを呟いていた。


「試すような言い方してごめんね?」

「……わけを聞いても?」

「ん? ふふ。そうだなあ。タカトならそう言うと思ってたから、かな?」


「きっと、タカトのお父様も」そう言う彼女に、僕は小さく肩を竦めた。


「まあ、父を嘘つきにするわけにはいかなかったので」


「何を言うつもりだったのかは知りませんが」そうやって付け加えた言葉に、やっぱり彼女はくすくすとおかしそうに笑っていた。