蓋を開けて見てみれば、父の手の平の上で転がされていたような気がしなくもないけど。でも彼女が、ゲームを終えても笑ってくれたから、きっとこれでよかったのだろう。
とは言うものの、全く驚かれないのもなんだか腑に落ちない。彼女は、本当にどこまでを知っていたのだろうか。
「ねえ葵さん」
「隠し事するのと嘘つくのって、どっちが悪いかな……」
「え?」
「あ、……いやー、今個人的にこの言葉にすごく敏感というか、耳が痛いというか、胸が痛いというか……」
あはは……と苦笑いをした彼女は、「いや、どっちも悪いか」と一人、ため息と肩を落とす。
「あなたにばかり言わせてしまうのはフェアじゃないね」
けれど、次に視線を上げたときにはもう、彼女はしっかりと僕を見据えていた。
「そうするように指示したのはわたしだ、と言ったら?」
「……え」
「わたしの婚約を出しに、あなたの家の統率力や権力を買ったと。それが真実だとしたら、あなたはどうする?」
そして、僕自身を試すような瞳で、そうやって揺さぶりをかけてくる。控えている二人の空気が鋭くなったけれど、それにはそっと手を上げて静めておいた。
「僕は、僕がこの目で見て、聞いたものしか信じない」
「今のわたしと過去のわたしが、全くの別人だとしても?」
妙に彼女のその言葉が――ストン、と腑に落ちた。靄が一気になくなった気がした。
そんなこと有り得るわけないのに、彼女に感じていた違和感が、ようやく拭えたような……。
「……きっと、わけがあったんだと思う」
「誠実さは認めるけど、判断を見誤ると一気に谷底に落ちるよ」
「そうなったら、そこからまた這い上がってくればいいよ」
「……素敵な考えだ」
そうしてふっと笑った彼女は、そっと目を閉じて「(あなたたちならきっと大丈夫だね)」小さく何かを呟いていた。
「試すような言い方してごめんね?」
「……わけを聞いても?」
「ん? ふふ。そうだなあ。タカトならそう言うと思ってたから、かな?」
「きっと、タカトのお父様も」そう言う彼女に、僕は小さく肩を竦めた。
「まあ、父を嘘つきにするわけにはいかなかったので」
「何を言うつもりだったのかは知りませんが」そうやって付け加えた言葉に、やっぱり彼女はくすくすとおかしそうに笑っていた。



