過去にそんなことがあったと知らされていないのは、繋がりを公にすること自体が控えられていたから。そして縁談を断られたと、大金を授かったとはいえ少なからず名に泥を塗られたから。無駄に自尊心の高い大人たちが、躍起になって隠したからだ。
だから僕も、敢えて話すことではないと思っていた。そのときにどれだけの人や金や物が動いたかは知らないが、これはそのときに終わった話であって、わざわざほじくり返すことではなかったからだ。
「でも父は違った。『常に誠実であれ』と、あの人は言うんだ」
隠さなくてもいいことを敢えて隠そうとするのは、自分勝手な自己満足なのだと。この世の中に、知らずにいて良いことなど、何一つないのだと。
「『誰かのための嘘つきであれ』と、あの人は僕に言うんだ」
『だから、君の知っている事実は彼女にも知る権利があります。そしてまた、君が彼女に伝える義務も。それで彼女が傷付くようなら、それは弱い証拠なだけで、彼女自身が強くなればいいだけのこと。君が、そんな傷付いたような顔をする必要は、どこにもありません。……けれど、それでも君が、彼女に本当のことを言えないのならば。代わりに私が伝えてあげましょう。大事な君のためなら私は、【嘘つき】にだってなれるんですよ』
誰かに託すことが、正しいときだってある。その逆ももちろん。
けれど自分で見たものを聞いたものを、他の誰かに託すことが、本当に正しい選択なのか。たとえそれが、血の繋がった父であっても。
答えは単純明快。
【自分でできることは自分でする】
それも父の教えだった。
「ま、まんまと“乗せられた”と言った方が近い気もするけどね」
やれやれと肩を竦めると、彼女はくすくすと楽しそうに笑う。その表情が見られただけで、ずっと胸にかかっていた靄のようなものがスッキリしたように感じた。
あのあと彼女のスマホに、他の生徒会メンバーから連絡が届いた。どうやら、それぞれのペアのところへ帰りの足を届けることで、ゲームの終了を告げたらしい。案の定、僕のところにも一通のメッセージが届いていた。差出人はもちろん、このゲームの主催者である父からだ。
《遅くなってしまったので
気を付けて帰ってきてくださいね》
結局、制限時間内に二人のところへ辿り着くことはできず、他のペアがどうだったのかさえ確認できずじまいだ。なんだか悔しい。
僕たちのところへ来てくれた二人は、それも兼ねてなのだろう。まあ、先の件もあるだろうけど。
でも彼女の場合はどうやら別で迎えが来ているらしく、話をしながら今は高校の方へと戻っている。
「でもおかげでタカトと親睦が深められたよ!」
「……ほんと、そうだね」



