すべての花へそして君へ②


 その世界は、【嘘】で溢れていた。

 ――強欲。嫉妬。軽蔑。侮辱。
 ほぼ強制的に連れて行かれた社交界の場には、そんな感情を取り繕った言葉や笑顔で隠し、平然と嘘をつく奴らばかりだった。

 大人たちは、それに気付いているのか。もしかしたら、それに気付かぬ振りをしているのかもしれない。大人だから。
 けれどもしかしたら、嘘に塗れた世界で生きているせいで、どれが本当か嘘かも、見抜けなくなっているのかもしれない。大人だから。小さな子どもに、それを判断するのはとても難しい。


『では、うちの子どもたちの中から』

『ええ。是非に』


 誰も、本気だとは思っていない。その場凌ぎで、建前に過ぎない。こういう場での口約束など、もはやただの言葉遊びだ。
 だから彼もまた、【嘘つき】だっただけのこと。


『一体どういうことですか! 話が違うではありませんか!』

『おや? 約束などしましたかな』

『……っ、ええ! 確かに、文書に残しているわけでは御座いませんが、そのような話をしたのは事実で御座います!』

『……そうでしたか』


 人は、平気で嘘をつく。
 つかれた人間が、どんな気持ちでいるとも知らず。つくたびに、自分の心を巣くう闇があるとも知らず。まるで、誠実であることが愚かのように。


『でしたらこうしましょう。これからも一層、我々の提携を根強くしていくために――……』


 そして、代わりに差し出された大金に目が眩んだ彼らもまた、結局は嘘つきと同様、自分の心に巣くう欲望にのまれたに過ぎない。
 繋がりさえあれば、何でもいい。自分にとっての利益になれば、なんだっていい。この世のすべては【金】なのだと。

 自分の代わりに金を出された【彼女】が。自分の代わりに金を受け取られた【彼】が。このことを知ればどう思うのか。そんなことなど、考えもせず。

 この世界は、【嘘】と【金】でできていた。