そのままの勢いで、この校舎全部の扉を手当たり次第開けてみたけれど、可愛いオウリくんの姿はどこにも見当たらなかった。ま……まさか、待ちきれなかった野獣どもが、早々とお持ち帰りしちゃったんじゃ……。
「できることならわたしもしたかった……っ!」
「はっ、はっ。……な、にをっ?」
あ。オウリくんのことで頭がいっぱいすぎて、彼の首引っ掴んだままだったのすっかり忘れてた。彼も彼で一言言ってくれればいいものを。いえ、悪いのはどう考えたってわたしなんですけど。
「すっ、すみません。居ても立っても居られなくて……」
ゴホゴホと盛大に咳き込む彼の背中をさすっていると、突然聞き慣れない着信音が耳に届く。
「ありがとう、もう大丈夫」
「もしかしたら、タブレットに何か届いたのかもしれないね」しゃがむ彼の優しいアーモンド型の瞳が、楽しそうに少し細められる。
ほらほら、早く見てみてよと。小さな子どものように急かしてくる顔にどこか引っ掛かりを覚えつつ、わたしは彼に促されながらタブレットに届いたメッセージを開いてみることにした。
┌ ┐
彼らは【コウナイ】にいます
└ ┘
届いたメッセージに、思わず「そうでなきゃ困るわ」と突っ込んでしまった。
確かに、校内とは誰も言ってはいないけれど……でなきゃ困るよ。19時までに見つけられないよ。
「ん? どうかした?」
そしてふと思ったのは、彼らがいた一室に、アイくんやカオルくんは見覚えがあるんじゃないか、ということ。
でも、それならペアにしてもすぐに探し出せるはずだし、そんなことをこの彼がするとは考えにくい。それに、映像を見た時点で彼らなら何かしら呟くはずだ。
ということは、百合ヶ丘の生徒も知らない学校のどこか……ということになるけれど、生徒会の彼らが校内を熟知していないなんてこと、あるのだろうか。ましてや、最近生徒会の一員になった彼しか知らないなんて。
「タカトさんは、二人がいる場所を知ってるんですよね?」
「知りたい?」
「はい」
食い気味で即答するわたしにハハッと軽く笑った彼は、「だったらひとつ、お願いがあるんだけど」と立ち上がり、真っ白になった白衣をふわりと大きく揺らした。



