『あっくん早くー』

『んんっ(じゅぽっ!)……じゃあ、こっち』

『はい残念でしたー。約束どおりお菓子は没収ー』

『あああ! 俺のお菓子……!』


 否、楽しそうにババ抜きをしている二人の姿があった。
 取り敢えずオウリくん、君はよくやった。あとで飴ちゃんをあげよう。


「あらら。これだと全然危機感じないね」


 後ろからタブレットを覗き込んでくる仕掛け人の彼は、なんだか残念そうだ。


「……あの」

「ん?」

「どうしてこんなこと……」

「……知りたい?」


 随分と勿体ぶりながらグイッと顔を寄せてくる彼からは、悪意みたいなものは感じられなかった。
 しばらくじっと、そのアーモンド型の瞳を見つめてみても、素直とか無邪気とか。そんな表現が多分、一番近しいものがあると思う。


「……葵さん、だっけ」


「僕、無言は肯定と受け取る主義なんだよね」そんなことを言っている彼は本当に、わたしたちの親睦を深めたいと、そう思ってるのかもしれない。


「たーかーとー!!」

「あはは。冗談だってじょーだん」


 そんなタカトさんを引き剥がすように、わたしたちの間に入ってきたアイくんは、かなりかんかんに怒っていた。


「なんで見つめ合ってるの! こんな近い距離で!」

「いや、今のは見つめ合うとかじゃなくて……」

「俺というものがありながら……っ」

「え。……あ、あはは……」


 あ、アイくんわたしに怒ってたんだね。ちょっと可愛かったけど、本気で目潤ませてたからつい突っ込むのをやめてしまった。以後気を付けまする。

 ふいに、覚えのある感覚が胸を締め付ける。


「それじゃあ二人一組乃至三人一組になるよー」


「このクジ引いてね。先が同じ色の人とペアだよ」そんな仕掛け人の号令に隠れ、わたしはそっと、それを緩めておいた。


 ――――――…………
 ――――……