〈どーだ渾身の激写だ
有り難く受け取りなさい
可愛さに悶絶しただろ
キサ様ありがとうと心から感謝しろ〉
《ふざけんな
さっさと削除しろ》
〈照れんな照れんな
正直にお姉様に話してみろって〉
《デコが痛い》
〈なんじゃそりゃ〉
《ていうかほんと
お願いだから削除してくれない?》
〈あんたも消すんなら
考えてあげてもいいよ〉
《ぜーったいヤダ》
それから、あっちゃんが天気気にしてる風だったから、遠回しにいろいろ教えてやったけど。……ヤダってなんだ。なんなんだヤダって。可愛い弟め。
「でもまあ、あいつはあっちゃんと違って天然でやるようなタイプじゃないからなあ……」
傘一本ってところがあざとい。すごくあざとい。あっちゃんはその辺なーんにも思ってないだろうけど。
そういえば、あいつは今日チカたちと遊んでたんだっけ。あとで、おでこについてちょっと聞いてみよう。
雨が降っていても比較的明るかった外の景色。けれど陽が落ちたのか。街灯の鈍い明かりが、より光を増したように見える。ぼうっと外の景色を見ていると、コンコンとテーブルをノックするような音が聞こえてきた。どうやら、ようやく待ち人のお出ましらしい。
「なになに? 今日はディナーなんだって?」
「あんたとね」
「機嫌損ねんなよ。最近菊が忙しいからって」
「それとも何か? さっき注意したことに逆ギレしてんの?」とか言いやがる眼鏡野郎に一つ、眼を飛ばす。
「その節はどーも」
「別に。他の客席にまで聞こえてなかったから気にすんな」
「……うん」
「……やけに素直じゃん。どした? なんかあったのか」
店員に慣れたように注文をした杜真は、あたしの前の席に座るなり、様子を窺うように頬杖を突く。
「……ねえ、杜真」
「ん?」
「あたし、恩返し……ちょっとでもできてるのかな」
はっと気付いたときにはもう、口からこぼれ落ちていた。
案の定、容赦なく蔑んだ視線が目の前から飛んでくる。
「……今のは、聞かなかったことにして」
「無理だな」
わかってる。これは……別に、昔のことがあったから、とかじゃなくて。
彼女の友達として。もっと。もっともっと、何かしてあげたい。ちょっとのことでもいい。悩みの助けに、あたしがなりたいの。
「……あのな、紀紗」
露骨に大きなため息をついた彼に身を竦めていると、重くボスンと頭の上に何かが乗っかってくる。えっと思って視線を上げれば、続けてぽんぽんと。目を丸くしているあたしに、彼は優しい顔してこう言った。
「自信持てよ。女友達第1号」



