そろそろいい時間になってきた。これ以上雨が強くなる前に、今日はお開きとしよう。
「あたしはここで待ち合わせだから」
「お、そっか! 今日はありがとう。それじゃあねー」
お会計を済ませ外へ出ると、やっぱり薄暗い雲が空を覆っており、西の方にはもっと黒い雲まで広がっていた。これは、本当に土砂降りになってしまいそうだ。
はあとため息をついていると、「やっぱり雨は嫌いなの? 天パ爆発するから」と、なかなかいい線をついてくる声が聞こえた。
「……って、え? ヒナタくん……なんで」
「いちゃ悪い?」
「……爆発してる?」
「してないよ。ちょっとふわってしてるくらい」
女子会とは言ってたけど、場所までは言ってなかったから、今ここにヒナタくんがいることにビックリ。でも……会えて嬉しい。会えて、よかった。
「そろそろ帰るかなと思って。駅まで送るよ」
バンッと大きな音を立てて傘を差したヒナタくんは、返ってこない返事に、どうしたのだろうかと不思議そうに首を傾げている。
【相手も同じように求めてる、って信じて疑わないこと】
二人で話をして、二人きりの時以外は一定の距離を保つことにした。前みたいに一緒にいる時間自体が減ったわけじゃないんだけど、触れ合うことが少なくなると、たった数日だとしてもやっぱり……心寂しくて。
「……あ、あの。ヒナタくん」
「ん? ……なーに」
彼も――わたしに会いたいと。そう思ってくれたのだろうか。
「傘、入れてもらってもいいですか……?」
✿
ぎこちないものの、無事に相合い傘で帰っていく二人の後ろ姿に、あたしはひとつ、安堵の息を漏らした。たく、お互い何を遠慮してんだか。
「にしても、白々しいったらありゃしない」
格好付けて“今来ました”的な雰囲気出してましたけど、あたしはだいぶ前から外で待ってたの知ってますからね。まあ、あっちゃんの嬉しそうな顔に免じて、ここはひとつ黙っといてやろう。
スマホを確認するが、待ち人からの連絡はない。どうやらまだもう少し忙しいみたいだ。ふと画面を見ていると、先程まで隠れてやっていた格好付けマンとの連絡の遣り取りが目に入ってしまい、思わずぷっと噴き出してしまう。



