すべての花へそして君へ②


 そして、尋常じゃないほど顔を真っ赤にした彼の熱が、ものすごい勢いでわたしにも伝染した。体中が真っ赤になっているのが、いやでもわかってしまう。


『ちょっ!? ……だ、大丈夫、ですか』

『ご、ごめん。安心したら立てなくなりまして……』


 ……と同時、腰も抜けた。幸いにも、支えてくれた彼のおかげで尻餅をつくことはなかった。けれど。


『『(えーっと……)』』


 あんなことを言われた後でこの距離だ。お互い、意識するなという方が無理な話。


『……と、取り敢えず運ぶよ。おんぶでいい?』

『あ、ありが、とう……』

『……ん』


 負ぶってくれた彼の耳は、まだ真っ赤で熱そうだった。きっと、わたしのも。


『動けなかったんなら早く言ってよね』

『面目ない……』


 お互い少し落ち着いた頃、『ごめんね』なんて声がかすかに聞こえた。どうやら、わたしを怒らせたと思っているらしい。
 ……違います。ただ、今まで感じたことのない恐怖とか安心とかが一気に切り替わって、動けなくなってただけです。勘違いさせてすまぬ。


『でも、怒ってないって言ったら嘘になるでしょ?』

『怒ってはないよ? ただ、怖くて気になっただけ』

『……怖かった?』

『うん。……ねえ、ヒナタくん』


 彼が、改まって何かを言おうとするたびに、わたしには【あのこと】がちらついて仕方がないの。わたしに、言わないといけないのに、本当は言いたくないことなんじゃないか……と。
 けれど彼は『全然関係ないよ』と、一段とやさしい口調でそっと否定してくれた。


『……ほんとに?』

『まあ、確かにいつか言わないといけないとは思ってたけど、あんなこと恥ずかしすぎて言えないよね普通。言わされたけど』

『わ……。全部当てはまってる……!』

『こらこらこら。さすがにこんなことでオレ泣かないから。完全な惚気だっただけじゃんさっきの』

『……泣いたの』

『いやーさっきさー、マジで怒らせたかと思って本気でビビってたんだよねーオレ』

『話逸らした』

『男がそんな簡単に泣くわけないでしょ』

『わたしが知ってる男たちはよく泣く人ばっかだよ』

『……それ、オレが知ってる人たちもだわ』

『あら奇遇ですね』

『そーですねー』


 一度、わたしを抱え直した彼は、『……ちょっとだけね』と、ぼそっとこぼしていた。その様子が少し寂しそうに見えて、彼の首元へそっと、抱きつくように腕を回す。


『えっ。……ちょ、……え?』


 そして耳元で小さく名前を呼び、彼の目を掠めてほんの一瞬頬にキスを落とす。『言ったでしょう? 寂しそうな顔したらキスするって』と、意地悪な囁きも一緒に。


『……オレがいつそんな顔』

『今』

『見えてないのに』

『見えてなくてもわかるよ』

『こっわ』

『どーもどーも』