すべての花へそして君へ②

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 体育祭終了後に用意したお祭りも、大きな花火が上がって無事終わりを告げ。


『あおい』


 わたしは、二人きりの時にしか呼んでくれない名前呼びに、つい嬉しくなったんだけど。振り返ってようやく、それに気付いたんだ。


『少し、距離を置いて欲しい』


 隠したのにはわけが……って、そんな大層なものじゃないか。


『……それは、物理的に? それとも気持ち的に?』


 全身の血の気が下がった割には、酷く冷静な言葉が出てきた。と言っても、正直言ってこのときは立っているのがやっとで、今にも泣き出しそうだった。その……本当の意味を知るのが、すごく怖くて。


『はあ? なんで気持ちに距離置かないといけないの。あんた、オレが嫌いなわけ?』


 でもまあ、そんなもの一瞬で吹き飛んでいきましたけどね。


『えっ……? え??』

『どうなの』

『嫌いなわけないでしょう!?』

『じゃあ馬鹿な質問してくんな』

『いっ、……今のは完全に言い方が悪かったと思うの』

『だったらなんて言ったらよかったのさ』


 熟考時間はコンマ5秒。


『えっと、半径2メートル以内に侵入してこないで……とか?』

『……なんか数字がリアルなんだけど』

『ち、違う……?』

『いろいろ違うし、だったらオレはいつあんたとキスすればいいの』

『それはわたしが知りたいよ!?』

『そんなのオレだって知りたいよ』


 いつもより少しだけ声を張った彼に目を丸くしていると、はっとしてすぐばつが悪そうに視線を外した。


『ひとまず集合しよう』


 取り敢えずヒナタくんは、一旦言うことをまとめたいのかそう言うけれど、わたしはその場から一歩も動かなかった。


『ダメ。今言って』

『ただでさえ遅れてるんだから』

『だったら今言わなくてよかったんじゃないの。先に話を出したのはヒナタくんの方だよ』

『そう……だけど、今は仕事の方が優先』

『何回も同じこと言わせないで』

『……ごめん』



【そのときは容赦なく聞くから】

 確かにあのとき、わたしはそう言った。だから、そっと目を閉じた彼の頭の中にも、わたしのその言葉がちらついたのだろう。……このときまでは、そう思っていた。



『……からだよ』

『え?』

『だ、……だから』


 どこか狼狽えた様子で静かに距離を縮めてきた彼に、わたしは自分の目を疑った。


『あ。……あおいが可愛いことすると、人目も憚らず触れたくてたまらなくなるので、少し距離をとっていただけると非常に助かります』

『……!?!?』