すべての花へそして君へ②


 予想の範囲内だったのか。彼は「そうか」とだけこぼして、驚く様子もなく新しい煙草に火を点ける。それで口を閉ざしてしまうのは、大人の狡さというやつなのだろう。


「……マサキさんの、……夢って何ですか?」

「組のみんなの幸せ……ってところやろか。クサいかー」

「そんなことないです。……とっても素敵な夢ですね」


 あたしのまわりには、立派な人が多すぎる。だから、自分の幸せを必死に探そうとしている自分が、酷くちっぽけに見えてしまう。
 あたしは――……みんなのようにはなれない。


「まあ、一番叶えたい夢は叶えられへんかったからな」

「……え?」


 ははっと笑う彼の瞳は、どこか悲しみに揺れているような気がした。


「夢……言うても願望やな。あれは」


 彼は、一体何を思い出しているのだろうか。
 けれど、その悲しみに触れることが怖くて、どう言葉を繋げればいいか、あたしにはわからなかった。


「なんや。聞かへんの」

「……き、聞いていいものなのかな、って」

「振りやで振り。柚子ちゃん、大の大人がこんなちょい出しだけすると思うか?」

「えっ? えーっと……」

「聞いて欲しいからちょい出しやねん。言いたいから振っとんねん」

「は、はあ……」

「大人は確かに狡賢いけどな、素直になれんで卑怯なことする奴らばっかなんやで。よお覚えときー」


 彼は、子どもっぽくにいーっと笑った。


「好きな子ーと、一回でもデートしたかったなーっちゅう夢や」


 それを聞いたあたしは、大の大人の人に……しかも男性に、とても失礼なことを思ってしまった。


「……マサキさん」

「なんやー」

「マサキさんめっちゃ可愛いですね!!」

「ははっ! せやろせやろー」


 それに食いついたあたしは、しばらくの間マサキさんの恋バナに花を咲かせた。【身分違いの恋】なんて、ドラマチックやないですかー!