予想の範囲内だったのか。彼は「そうか」とだけこぼして、驚く様子もなく新しい煙草に火を点ける。それで口を閉ざしてしまうのは、大人の狡さというやつなのだろう。
「……マサキさんの、……夢って何ですか?」
「組のみんなの幸せ……ってところやろか。クサいかー」
「そんなことないです。……とっても素敵な夢ですね」
あたしのまわりには、立派な人が多すぎる。だから、自分の幸せを必死に探そうとしている自分が、酷くちっぽけに見えてしまう。
あたしは――……みんなのようにはなれない。
「まあ、一番叶えたい夢は叶えられへんかったからな」
「……え?」
ははっと笑う彼の瞳は、どこか悲しみに揺れているような気がした。
「夢……言うても願望やな。あれは」
彼は、一体何を思い出しているのだろうか。
けれど、その悲しみに触れることが怖くて、どう言葉を繋げればいいか、あたしにはわからなかった。
「なんや。聞かへんの」
「……き、聞いていいものなのかな、って」
「振りやで振り。柚子ちゃん、大の大人がこんなちょい出しだけすると思うか?」
「えっ? えーっと……」
「聞いて欲しいからちょい出しやねん。言いたいから振っとんねん」
「は、はあ……」
「大人は確かに狡賢いけどな、素直になれんで卑怯なことする奴らばっかなんやで。よお覚えときー」
彼は、子どもっぽくにいーっと笑った。
「好きな子ーと、一回でもデートしたかったなーっちゅう夢や」
それを聞いたあたしは、大の大人の人に……しかも男性に、とても失礼なことを思ってしまった。
「……マサキさん」
「なんやー」
「マサキさんめっちゃ可愛いですね!!」
「ははっ! せやろせやろー」
それに食いついたあたしは、しばらくの間マサキさんの恋バナに花を咲かせた。【身分違いの恋】なんて、ドラマチックやないですかー!



