すべての花へそして君へ②

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 次第に強くなり始めた雨に、さすがに雨宿りができるところを探した。一心に走り続けたせいで、自分が今立っている場所がどこなのかさっぱり。どうやら調べた方が良さそうだ。


「さ、さすがに苦しい……。食べ過ぎた……」


 ふうと一つ息を吐き、一度後ろを振り返りながら、ゆっくりと鞄からスマホを取り出した。


「……ちょっと、わざとらしかったかな」


 つい先程可愛い通知音とともに届いたメッセージ。開けずにいるそれが、酷くスマホを重く感じさせた。


「えーっと……ふむふむ、なるほど」


 今日もやっぱりそれを見ることはできなくて、見て見ぬ振りをしながら地図で現在地を確認。雨が落ち着いたら帰ろう。


「……あ。もしもしお母さん?」


 そう思っていたとき、ちょうどタイミングよくかかってきた電話は、“絶賛出張中の母”からだった。


「今日何時頃帰ってくるんだっけ? ……え。帰るのは来週? 嘘! そうだったっけ! すっかり勘違いしてたあ!!」


 母からの電話は、荷物の受け取りはきちんとできたかというもの。仕事が一段落し、こちらに帰ってくるので荷物を少しずつ送ってきているのだ。
 大丈夫。荷物はちゃんと受け取ったって、お父さんから連絡来てたから。


「あはっ! うっかりしてたよー。荷物だけ送って今日手ぶらで帰ってくるもんだと……ああ、うんもちろんっ。それに関してはお母さんの味方だからねー。煙草やめないお父さんが悪いから。お母さんの許可が下りるまで家には入れておりませんよー」


 最後に早く仲直りするんだよーと一言添えて電話終了。
 そしてこれまたタイミングよく、“今日は遅出の父”から《行ってくるから戸締まりしっかりな》と連絡が届いた。〈オッケー牧場☻〉……返信完了っと。
 あまりにもタイミングのよすぎるそれは、血の繋がっている家族だからこそ、なのかもしれない。一人になりたいときに限って、離れている二人からよく連絡が来るのだ。それは……昔から。

 それと同時に――逃げるなと。目を背けるなと。言われているようだった。


「……そろそろあたしも、覚悟決めなくちゃだ……」


 こうやって引き延ばしたところで、何の解決にもならないことは、他でもないあたし自身がよく知ってる。
 決めたんだ。だから、もう絶対に迷ったりなんか――――


「――――……!!!!」


 すると、落ちかけた視線に一台の黒い車が、静かに入り込んでくる。