ウェイター姿の彼は、そう聞きながらコーヒーを下げてくれる。……さ、様になりすぎなんですけど、この人。
「……あんた、とうとう本気でストーカー紛いのことを」
「ちょ、紀紗誤解だから。ここ俺のバイト先」
「しらばっくれちゃって。知ってるんだから。あんたがあっちゃん追いかけて戻ってきたことくらい」
「い、いろいろ間違ってるんだけど……これだけは言っとくけど、本当にバイトしてるんだって。春から」
「ほんとうかなあー」
「いやそこ信じてくれないと話進まねえ……」
と、仲良さげに話している二人を見て、ユズちゃんが興味津々に小声で聞いてくる。
「なんだか仲いいねあの二人! こう見るとちょっと恋人に見えたりするね!」
うん。昔の話は敢えてほじくり返すまい。
結局のところトーマさんがキサちゃんに勝てるはずもないので早々に退散していった。
「あと、お前声デケえんだって。ちょっと抑えろ。他の客に迷惑」
紀紗にそれ言いに来ただけだからと、本当にそれだけ言って。……コーヒーのお礼、しそびれてしまった。
それに他のお客様にご迷惑までかけて……。また来よう。菓子折持って。
「……ごめんあっちゃん」
「え?」
「こういうこと言いにくいと思って押し気味に聞いてたけど……デリカシー、なかったからさ」
「あ、あたしもごめんね……! 何か力になりたくて……」と、ユズちゃんにも。けれど、わたしのことを心配してくれている二人がなぜ謝っているのかわからなかった。……はじめは。
「……ううんっ。わたしは全然気にしてないよ! ありがとね」
今のお礼も、今度来たときにしておかないと。
「ひとつ。思ったんだけどさ」
紅茶を一口飲んで、改まった口調のキサちゃんは、遠慮がちに続きを話した。
「あっちゃんさ、大丈夫なの……?」
「へ? なにが??」
「……こういうことに関して、昔いいことなかったでしょ?」
もしかして、ミズカさんとヒイノさんの話を……?
少し気まずそうに話している彼女の様子を見るに、恐らくはそのことを言っているのだろう。
「あっ。じゃあ、なんならあたしでまず練習してみる??」
「ちょっと柚子は黙ってて」
「えー結構本気だったのにいー」
うん。今のも敢えて触れることはしないでおこう。
「……顔見て、多分大丈夫なんだろうなとは思ったのよ」
「でも、もしかしたらそれも、女の勘ってやつなのかなって。思ったんだよねえー」
「……??」
またよくわからないで首を傾げていると、キサちゃんは頬杖をつきながらため息を落とした。
「……あいつは、何を気にしてんのかなーって」
少しだけ、憂いに顔を沈めて。



