すべての花へそして君へ②

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「「覚えてないだあ~?!」」


 静かな喫茶店に響き渡ったのは、容赦ないわたしへの侮蔑だった。いや、一応は加減してくれてた……と、思う。


「何やってんだこの馬鹿ちん」

「ここまでおバカだと、さすがにひなくんかわいそうだねー」


 やっぱ容赦なかったっ! 
 けれど、言い訳も何もできないので、一人しゅんと小さくなるしかない。しくしく……。

 ふと視線を横へずらすと、そこにあったのは紙ナプキン。目についたそれをおもむろに手に取ってみる。このまま涙を拭いてしまおうかとも思ったけれど、気を紛らわせようとギザギザに折ってみた。
 端から端まで折り終わってすぐ、そういえばこんな折り方だったなと思い出し、ストローの袋で真ん中を縛ってみた。そして両端から一枚ずつ立ち上げて紙の花を作ろうとしたところで気づく。……あ。紙ナプキン一枚じゃ無理だった。せいぜい紙でできた蝶ネクタイかな、うんそうしよう。
 そう思ったときだ。なんだかひんやりとした視線に気づいたのは。


「こりゃ当分天然キャラだな」

「そうだね。本気でお花作ろうとしてたもんね」


 気づいてたんなら途中で教えてはくれまいか。
 そんなことも言える立場じゃないので、もう何もせず大人しくいることにした。


「思ったんだけど、旅行から帰ってきた後も、そういう雰囲気にはならなかったの?」

「でも、話さないところを見ると……」

「いや、多分なってるとは思うんだよね。あたしの勘だけど」

「ということは、階段は上らずじまいってことに?」

「そう。そこなのよ問題は」


 あ、あなたたちどこかで見てたりしたんですかね? 女の勘って怖いっ……。
 つい無意識に頼んでしまったブラックコーヒーに、砂糖とミルクを入れようとしていると。


「申し訳ありませんお客様、お飲み物をどうやら間違えてしまったようでして」


 と、代わりにリンゴジュースを届けに来た店員さんを見てびっくり仰天。


「何を覚えてないのかな?」

「はあ!?」

「えっ!」

「……と、トーマさん……?!」