『あらよっとお~』
ふと目を瞑ると、瞼の裏に映るのは潰れた蛙の如く壁へ磔になった大の男たち。そしてビリビリのドレスを着た少女。……いやいや、もっといろんなことがあったでしょうよ。何でピンポイントで、教会のバトルシーンなんだわたし。
とは言うものの、“わたし”に戻って思い切り体を動かしたのは、あれが初っ端。思い出深くないといえば嘘になる。……まあ? どうせなら? 怪盗さんにようやく名前を呼ばれたところとか?? ……もっとあったと思うけど。
――あれから。救ってもらえたわたしは、長い長いヒナタくんの話を聞き終え、無事に実の両親とも、みんなとも話をすることができた。大好きな彼とも、友達からこれ以上ないほどの関係になれたのだけれど。しばらくは、そんな素敵な幸せな余韻に、浸ることはできなかった。
『あおいちゃん、今日も本当にごめんなさいね……』
公安――コズエ先生からの呼び出しは、あのあとの一回だけでは終わらず。数日を挟んで何度も呼ばれた。そしてそれは、暑くなった今でも続いている。はじめの頃に比べたら頻度は少なくなったけど。
帰ってきたら帰ってきたで、することは山積み。いろんなことを計画し、してきてしまった“わたしたち”だったので、それはもう片付けに追われ――……追われて、正直この一年はその片付けで終わってしまうんじゃないかとも思っていたのだけれど、何故かそんなことはなく。
拍子抜けしたわたしの頭によぎったのはもちろん、彼の存在だった。
『……え? オレがそんな面倒なことすると思う?』
――え? 思う思う。そんなところで素直じゃない部分出さなくてもいいよ、って言ったらそっぽ向いちゃったけど。
助けたあとのことも考えてくれていたみたいで、素直じゃない彼、そして理事長と父が主にそっちの方面は動いてくれていたらしい。逆に早く終わりすぎて何度も確かめましたがな。



