そう言うと、浴衣の美少女はふっと笑って「結局聞こえてないんじゃない」とこぼした。
「つまりはストーカーしてたのね」
「ぼでぃがーどと言ってくれた方が嬉しいな」
「生憎一人になりたいの。折角なんだからアタシのことは放っておいて」
「え? そうなの? でも結構ここに来てたの目立ってたよ?」
「え」
「だって、中央から離れて行ってる人なんてそうそういないよ? ましてや折角のお祭りなんだし!」
「……うそ」
「それに絶世の美少女だよ! あ、間違えた。国宝級だった」
「そこどうでもいいわっ」
「大事だよお~」
けどねつばさクン、悲鳴が聞こえたのは本当なんだよ。
「はあ。……それで? どこから聞いてたんだよ」
「『あんたさえ嫌じゃなかったら』?」
帯も気にせず、もたれ掛かるように背を預けた彼は、「最初からかよ」と、脚を開きながら吐き捨てる。……君のこと知らない子たちがそんな姿見たら、ビックリするよ多分。
「でも、先にいたのはおれたちだからね? 隠れてたんだから」
「……たち?」
「あ」
これ、内緒にしといてって言われてたんだった。まあ、実際彼はもう少し後から来たんだけど。
でも、言ってしまったものはしょうがないよねえ。実は確信犯ですがあ。
「あーもうヤダ。ほんとヤダ。お願いだから茜、一人にしてくんない?」
「あ。今の言い方ひなクンっぽいね」
「あいつの名前出されんの、今本気で堪えるんだよ……」
そう言っても、彼はここから離れようとはしなかった。おれも、彼から離れるつもりは毛頭なかった。
「つばさクンは、本当にあおいチャンが好きなんだね」
もう、きっと動けないんだ。
「は?」
だって、そうでしょう?
彼女の想いを知ってても。彼女が一人を選んだ今も。君は強く想っていて、それに酷く、苦しんでいる。
「……それは、茜も同じだろ?」
「あれ? つばさクンもしかして視力悪い? それとも頭悪い?」
「……どういう意味だよ」
「そのまんまだよお」
誰が今、この状況を知ったとしても、口を揃えて言うだろう。君の方が、彼女のことをおれよりも想っていると。



