すべての花へそして君へ②


 そう言うと、浴衣の美少女はふっと笑って「結局聞こえてないんじゃない」とこぼした。


「つまりはストーカーしてたのね」

「ぼでぃがーどと言ってくれた方が嬉しいな」

「生憎一人になりたいの。折角なんだからアタシのことは放っておいて」

「え? そうなの? でも結構ここに来てたの目立ってたよ?」

「え」

「だって、中央から離れて行ってる人なんてそうそういないよ? ましてや折角のお祭りなんだし!」

「……うそ」

「それに絶世の美少女だよ! あ、間違えた。国宝級だった」

「そこどうでもいいわっ」

「大事だよお~」


 けどねつばさクン、悲鳴が聞こえたのは本当なんだよ。


「はあ。……それで? どこから聞いてたんだよ」

「『あんたさえ嫌じゃなかったら』?」


 帯も気にせず、もたれ掛かるように背を預けた彼は、「最初からかよ」と、脚を開きながら吐き捨てる。……君のこと知らない子たちがそんな姿見たら、ビックリするよ多分。


「でも、先にいたのはおれたちだからね? 隠れてたんだから」

「……たち?」

「あ」


 これ、内緒にしといてって言われてたんだった。まあ、実際彼はもう少し後から来たんだけど。
 でも、言ってしまったものはしょうがないよねえ。実は確信犯ですがあ。


「あーもうヤダ。ほんとヤダ。お願いだから茜、一人にしてくんない?」

「あ。今の言い方ひなクンっぽいね」

「あいつの名前出されんの、今本気で堪えるんだよ……」


 そう言っても、彼はここから離れようとはしなかった。おれも、彼から離れるつもりは毛頭なかった。


「つばさクンは、本当にあおいチャンが好きなんだね」


 もう、きっと動けないんだ。


「は?」


 だって、そうでしょう?
 彼女の想いを知ってても。彼女が一人を選んだ今も。君は強く想っていて、それに酷く、苦しんでいる。


「……それは、茜も同じだろ?」

「あれ? つばさクンもしかして視力悪い? それとも頭悪い?」

「……どういう意味だよ」

「そのまんまだよお」


 誰が今、この状況を知ったとしても、口を揃えて言うだろう。君の方が、彼女のことをおれよりも想っていると。