すべての花へそして君へ②

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 だいたいね、脊髄で行動しすぎなんだよ。
 頭いいのに頭使わないとかどんだけ無駄遣い。
 ちょっと考えればわかることじゃん。
 アキくんが帰ってきて教えてくれたからいいものの……。
 じゃなかったらあんた今頃みんなにすごい迷惑かけてたんだよ?
 わかってる?
 みんないるんだから、ちゃんと頼って。


「ま。レンは役に立たないけどね」

「おい、九条」

「はい。ごめんちゃい……」

「あおいさんも、そこは否定か何かしてくださいよ」


 そして無事に帰って仕事に戻り、昼食を食べ終わったあともずっとこの調子。どうやら手透きらしい彼は、わたしたちの間を陣取ってちくちく……ネチネチと小言を続けております。


「あ。そういえばレンくん、わたしのこと探してたんだって?」


 そんな愛あるお説教から逃げるように。彼の向こう側にいるレンくんへHELP要請。


「え? ああ、借り物競走で……」


 けれどそこで言葉を止めたレンくんはなぜか、わたしから視線をヒナタくんの方へと流す。


「……ねえあおいさん」

「はい。なんざんしょ」

「なんで九条さん、こいつのお兄さんなんですかね」


 どうしたレンくん▼


「悪かったね。出来の悪い弟で」


 やさぐれちゃったよ▼

 まあね、ツバサくんがかっこいいのは今に始まったことじゃないし、男女ともにモテモテなのも、今となってはどうすることもできない事実だからね。そりゃレンくんだって好きになるさ、うん。
 そんな拗ねてしまった弟くんの頭をぽんぽんと撫でてあげる。


「だからヒナタくん。レンくんが取られちゃったみたいで寂しいのはわかるけど」

「いや違うし」

「ん? じゃあ、お兄ちゃんが取られちゃって」

「だから違うし」

「あおいさん、そもそも論点ズレてます」

「先にズラしたのはレンくんなのにー」


 話を元に戻すと、どうやらレンくんは去年のカナデくんと同様ツバサくんに負ぶってもらったらしい。『女の子に』って借り物カードには書いてあったから、もちろん大急ぎでメイクとカツラもバッチリで。


『す、すみません九条さん。わざわざそこまでしてもらって……』

『別に? これくらいどうってことねえよ。俺も、ちょっと大人げなかったし』

『それは……はい、何となくわかってましたけど』

『ん? どうかしたか?』

『……九条さん、本当にあいつのお兄さんなんですか?』

『は?』


 終わったあとには『ビリでごめんな』なんて。そんな声までかけてもらって、ポロッと二人でそんな話をしたんだとか。