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――パシャリ。
そんな二人の様子を、遠くから静かにカメラにおさめた俺は、ため息交じりのものをそっと吐き出す。……ひとまず、いつも通りに戻ったらしい二人の背中はテントの方へと戻っていってるみたいだけど。
「……なーんか二人、おかしいよな」
日向はそりゃ、誰が見ても重傷だけど……葵ちゃんまで。一体いつから……。
「熱海だよ、杜真くん」
「うわっと! 信人さん、いたんですか」
「そっくり返すよ、その言葉」
けれど、背後から俺の撮った写真を覗き込む彼の表情は、いつになく真剣だった。
「……見ます? ベストショット」
「いや、一通りお願い」
そんな冗談もさらっと受け流され、俺は頼まれていたデータを引っ張り出す。と、言ってもバトルシーンは、日向はともかく信人さん、動きが速すぎて残像みたいにしか移ってないけど。
「………………」
一体彼は、何が見たいのか。それから……何を、知っているのか。
「……うん。ありがと。葵は? 何か言ってた?」
「え? いえ、特に何も」
何かを確かめた彼は、小さく頷いて体勢を元に戻す。けれど、その返事にはすっかり眉尻を下げて「そっか」と。すごく残念そうにこぼすだけ。
「……あの、信人さ――」
――あなたは何を、知っているんですか?
けれど続けたかったその言葉は、すっと出た彼の手の平によって容易く遮られた。
「時が来れば、……わかるから」
「それじゃあね」と。去って行く丸まった小さな背中はもう、泣いているようにも見えて。声をかけることは躊躇われた。
「……熱海、か」
代わりに落ちた、彼から拾った言葉。そして視線は、手元に残る“熱海”に落とした。
「……何しやがったんだ、こいつ」
そこに映るキャップ帽の男に、嫌な予感を感じながら。
――パシャリ。
そんな二人の様子を、遠くから静かにカメラにおさめた俺は、ため息交じりのものをそっと吐き出す。……ひとまず、いつも通りに戻ったらしい二人の背中はテントの方へと戻っていってるみたいだけど。
「……なーんか二人、おかしいよな」
日向はそりゃ、誰が見ても重傷だけど……葵ちゃんまで。一体いつから……。
「熱海だよ、杜真くん」
「うわっと! 信人さん、いたんですか」
「そっくり返すよ、その言葉」
けれど、背後から俺の撮った写真を覗き込む彼の表情は、いつになく真剣だった。
「……見ます? ベストショット」
「いや、一通りお願い」
そんな冗談もさらっと受け流され、俺は頼まれていたデータを引っ張り出す。と、言ってもバトルシーンは、日向はともかく信人さん、動きが速すぎて残像みたいにしか移ってないけど。
「………………」
一体彼は、何が見たいのか。それから……何を、知っているのか。
「……うん。ありがと。葵は? 何か言ってた?」
「え? いえ、特に何も」
何かを確かめた彼は、小さく頷いて体勢を元に戻す。けれど、その返事にはすっかり眉尻を下げて「そっか」と。すごく残念そうにこぼすだけ。
「……あの、信人さ――」
――あなたは何を、知っているんですか?
けれど続けたかったその言葉は、すっと出た彼の手の平によって容易く遮られた。
「時が来れば、……わかるから」
「それじゃあね」と。去って行く丸まった小さな背中はもう、泣いているようにも見えて。声をかけることは躊躇われた。
「……熱海、か」
代わりに落ちた、彼から拾った言葉。そして視線は、手元に残る“熱海”に落とした。
「……何しやがったんだ、こいつ」
そこに映るキャップ帽の男に、嫌な予感を感じながら。



