すべての花へそして君へ②

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 ――――……


『――アキラくん!』


 感じた胸騒ぎに、本気ダッシュで一分と経たずに目的地へ辿り着いたわたしは、到着して早々がっくりと肩を落とした。


『酷ーい。俺の顔見てすぐそんな反応するー』

『シン兄離せっ』

『やっほー葵ちゃん。見に来たよー』


 そしてすぐに回れ右。ハイ、異常ナーシ。直ちに持ち場へ戻ります。


『嫌だよ葵! 行かないで! 俺に構って……!』

『そうだよ葵ちゃん! 俺にも構って!』

『必死か……っ』

『あなたたち、ほんといつの間に仲良くなったんですか』


 どうやら彼らは純粋に応援に来たらしいんだけど、みんながついさっきのわたしみたいな反応するのが嫌でこっそり見てたんだとか。


『……シント、ちゃんとカエデさんに了承得たの?』

『すぐ戻ってくるねってメモ残してきたよ』


 得てないよそれ。
 ある意味有名人の彼は、やっぱり熱海同様ぱっと見不審者に間違われてもおかしくない恰好で出歩いていた。……頼むよほんと。皇の沽券に関わるよ?
 まあ、今はいいや。それどころじゃないし。


『ねえシント。それからトーマさんも知りませんか? ここに業者さんがタイヤを取りに来たはずなんですけど……』

『ああ。それならさっき、無事に交換できましたって。俺のトランシーバーに連絡が入ったよ』

『なんであんたのトランシーバーに連絡が入るのかな……?』

『ん? ハイジャックしたからだよ?』

『ですよね~』


 大丈夫かな。未来の皇。大丈夫かな。未来の弁護士。
 わたしたちの仕事を大いに邪魔してきたのは、まあ大目に見てあげることにして。


『普通に来てたら普通に喜んでるよ。わたしも』

『いやあ、他の奴らは絶対“うげっ”て顔すると思うんだよねー』


『『というか想像できる』』と、二人は苦笑いしながらポリポリ頬を掻いていた。
 彼らでもそんな心配をするのだなと、なんだか少し拍子抜けだ。シントはともかく、トーマさんなんていつもなら進んで意地悪なことするのに。


『大丈夫です。素直じゃないだけですから数名』

『……そうかな』

『はいっ』


 それだけ、彼らにとっても“最後”が大事だってことだ。それだけ、彼らにとってみんなが“大切”だってことだ。


『じゃあ、堂々と応援してもいい?』

『うん。もちろん』

『じゃあ、堂々と写真撮ってもいい?』

『はい。もちろ――』


 …………ん?