どうやら皇家では事が巧く運んだようで一安心。……だけど、ひとつ。今は少し気がかりなことがある。
「ん? どうした葵」
「いやね。このメモの通りなら、もう報告が上がってきてもおかしくない時間なの……」
四桁の数字から、20分は過ぎようとしていた。それは、明らかにおかしい時刻。時間がかかりすぎている。
「あの、アキラく」
「俺が行ってくる」
「えっ」
「体育館裏だったよな確か」
「そう……だけど」
でも、アキラくん全部の助っ人に回って大変だろうし、わたしが行ってくるからここで休んで――
「いや、行かせてくれ。あとが怖い」
「お、おう。なんかすまない……」
欲しかったけど去年のことがあったからな。ここは仕方なく甘えさせてもらおう。
それから彼を見送ってすぐのこと。始まっていた借り物競走を眺めようとしていたときだ。トランシーバーに連絡が入る。
「――はい。こちら業務指令部本部です」
『葵。俺だ』
「あ。アキラくん! どうだった? 業者さんたちいた?」
『いや、それが誰もいなくて……。一つ減ってはいるから、ちゃんと交換はできたんだと思――』
「……アキラくん?」
そこで切れた声の後あと。
「……えっ。あ、アキラくん……!?」
何かが落ちた音を最後に、トランシーバーからは何も聞こえなくなった。
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「はあっ。はあっ」
「あれレン。どうしたの? ギブアップしに来た?」
「違うっ! こ、これ。あおいさん、は……?」
「これ……て」
借り物競走の真っ最中。引いたカードに、必死になって生徒会のテントに駆けてきたオレは、九条にそれを見せながら彼女の姿を探す。
「それ、去年俺が引いたヤツ……」
手の空いている生徒会メンバーが覗き込んで早々、何かを思い出したらしい東條さんが、なぜか顔を引き攣らせていた。
「あ。……東條さんも、去年はあおいさんに?」
「なんでそうなるかな? 違うからね。俺はちゃんと変換したから」
「「ま、運ばれたことがあるのは事実だけど」」
「ちょっと、そこの兄弟静かに」
酸欠のせいで、イマイチ状況が把握しきれず首を傾げるけれど、今はそれよりもあおいさんの居場所だ。
誰か、ご存じの人いませんか……?
「アオイちゃん? 業務部のテントは? いなかったの?」
「はい。もぬけの殻で……」
あの人、一体何してるんだ。確かに、係的にずっとテントの中にいないといけないってわけでもないけど、オレの代理であるはずの皇さんもどうしてかいないし。



