そんなことを考えながら癖のない文字をそっと撫でていると、端に四桁の数字を見つける。恐らく報告を受けて指示を出した時間だろう。そろそろ業者の方から報告があるかな。
「順調か」
「レンくんの体力の減りが異常です」
「それは……すまない。さすがの俺でもどうすることもできない」
「いえ、こちらこそすみません。皇さん……」
後ろから声をかけてきた彼の声は、心底申し訳なさそうだ。それがなんだかおかしくてクスッと笑いが漏らすと、生徒会長様は不思議そうに首を傾げる。
「……どうかしたか?」
「ううん。なんでもないよ」
係自体は去年と人数の割り振りは変わらず。生徒会のメンバーが一人増えた分、一人分の体が空く。去年の状況から判断して、必要そうな係へ一人分割り振る予定だったが、新たに係を新設することにしたのだ。その担当が、アキラくん。
「月雪、次もお前出るんだろ?」
「えっ! もう出番なんですか……?」
「出場できるものには全部エントリーしてるだろ? 苦手克服に前向きで偉いな」
「……それ、九条の嫌がらせなんですってば……」
はあと大きなため息をつき、重い足を引き摺って彼は入場ゲートの方へと嫌々ながら足を運んでいった。そんな彼の後ろ姿に、二人して笑う。
「どうですか? 生徒会長さん。雑用係の気分は」
「葵の気持ちがよくわかる」
「え? いうてわたし、そこまで生徒会で雑用という雑用やらされてない気が……はじめくらいしか」
「なんだかんだでみんなが助け合ってる証拠だろ、それは」
「……そうだね」
彼の係は、いわゆる助っ人係。競技に出て人手不足のところへ、彼は助っ人に来てくれる。だから実は彼が一番仕事量や覚えることが多いのだ。
「こっちは大丈夫だよ。レンくんいても一人のようなものだし」
「月雪が聞いたら泣くぞ」
「それに、大した仕事内容じゃない」と、先程までぐったりしていた彼が座っていた椅子へ腰掛ける。
「もし葵がこの係になっててもきっとそうする」
「おや? わたしと張り合うと、遠回しに言ってるかい?」
「張り合うつもりはないが、それくらいにはなりたいなって思っているかな」
「そんなの、アキラくんならあっという間だよっ」



