「恥ずかしいんだあ」

「うわっ! ちょっと、見ないでよ」


 そんな可愛い彼についつい悪戯心。扉をちょこっと開けて、お着替え途中の彼をじーっと見つめる。


「全然恥ずかしがることないのにい」

「うるさい。自分だって恥ずかしいでしょ」

「それはだって恥ずかしいけど、ヒナタくんみたいな無駄のない体だったら、わたし自慢して歩きたいくらいだよー」

「そんなことしたら紛うことなく捕まるよ」

「いやいや、もちろんたとえばの話でね? それにしても、ほんと素敵な体だわ! 腹筋が割れてることもさることながら、この僧帽筋がまたこう、いい感じにグイッと――」


 ……ちょっとね。可愛かったからって調子に乗りすぎたって思うよ。


「――わあっ!?」


 ガラッ――と勢いよく開いた扉から、真っ白い大きなタオルがボフッッ!! と飛んできて。そのままわたしをくるりと包み込んでくれるという。……どこかであったな、このシチュエーション。
 ただ、一つ違うことと言えば――――


「違うこと考えてる余裕があるってことは、手を抜かなくても大丈夫ってことだよねえ?」

「ひ、ヒナタくん笑顔が怖い……というか手? ぬ、抜いてたのっ!? あれで!?」

「オレに勝とうなんて千年早い」


 彼がものすごーい真っ黒な笑顔だった。……ってことかなあ。


「……んんっ」


 深く、深く……深く。そこから何もかもを奪われてしまいそうな口付けに、もう立ってはいられなかった。


「はあっ。はあ。はあ……」

「それで? ご感想は?」

「こ、腰に、くる……」


 それでも余裕な彼は可愛くあっかんべーをしたあと、へたり込んだわたしなんか見向きもせず、さっさと着替えて立ち去って行ってしまったのだった。


「………………えっ。ちょ、ちょっとヒナタくん……!!」


 だいぶ回復してから、服を着替えようとしたときだ。たぶん、自分の服を取りに行くついでにわたしのも持ってきてくれていたんだろうけど……。


「ぱ、パンツ返して」

「その前に言うことは」

「いじって遊んでごめんなさい」

「なんでいじったの」

「だってもう、食べちゃいたいくらい可愛かったんだも――」

「今日一日ノーパンで過ごせ」

「ご、ごめんってばっ!!」


 やり過ぎ厳禁。改めて下僕精神に刻みつけておきました。