ちゃぷん……。
「自分から誘っておいて」
「ちょっと、いろいろ間違えたんです」
「へー」
再び、浴槽内で縮こまっております。時たま長い彼の足が攻撃してきますけど、仲良し小好しで二人して浸かっておりますよーあはは。
「……ん? どうしたの」
「い、いえ、自分の彼氏様の美しさに見惚れとりました」
「は?」
これぞ、水も滴るいい男。掻き上げた前髪からぽたぽたと落ちてくる滴がまた、いい感じに彼の色気度をアップさせて……ぽたぽた鼻から赤いのが垂れそうだわさ。
「…………」
「えっ。な、なに……?」
鼻を押さえていたら、今度は彼の方から熱い視線が……え。ま、まさか本当に鼻血出てる!? それはもう絵面的にアウトでは――
「オレも、可愛い彼女に見蕩れてました」
「……エ?」
「なんでそこで聞き返す。しかも変な顔で」
「だっ、だってわたし、可愛くな」
可愛くないから――そう言いかけたわたしの腕を掴んで引き寄せ、彼は真っ直ぐにわたしを見つめた。
「オレの可愛い彼女をそんな風に言わないでくれます?」
ちょっとだけ怒りながら。可愛く少しだけ、ほっぺたを膨らませて。
「あれだけ昨夜は可愛い可愛い言ってあげたのに」
「変な顔って、言った……」
「そんな変な顔でさえ可愛いと思うくらいにはベタ惚れってことですよ」
「あ、……ありが、とう」
「……? ……いいえ」
嬉しそうに弧を描いた唇が、数度触れるだけのキスを交わしたあと、上唇をはむ、と挟むような口付けに変わる。
これも……慣れ、なのだろうか。それは『開けて?』の可愛い合図。
「んっ、ふぁ」
遠慮がちに開いたところへ、スルリと彼は容易く入ってわたしを見つけ、深く絡まる。
……はじめは、それにただ驚いて、それよりも息をするのに必死だった。いや、まだまだ恥ずかしいし、今だって彼に必死に応えるので精一杯だ。
でも、やっぱりこれも慣れ、なんだろう。そう考えたら余計恥ずかしいけど。
「んんっ!?」
そんなことを考えていたら、体を這うように彼の手がゆっくりと動き始める。
「ん、はっ。ひ、ひなたくんっ」
「余計なこと考えてたでしょ」
「えっ? そ、そんなことは」
「何考えてたか教えて?」
「ぅえっ!? ちょっ。ひな、んんっ」
腰元を掴まれグッと上に持ち上げられたかと思うと、彼は胸元へ顔を埋め……。齧り付くように吸い付くように、痕がついてしまいそうな加減で、何度もキスを落としてくる。
吸い付いて。音を立てて離れて。また吸い付いて。ちゅっと音を鳴らして離れて、そこを舐めて……。
「えっ。い、今舐め」
「早くー」
「あっ。ちょっと。そこは。ダメだって、言って」
けれど彼は、わたしが思っていた以上に器用で……悪戯な手の持ち主だった。
「っ!? んんんー……!!」
「オレ、必死に声我慢してる顔も結構好きなんだよね。可愛い」
胸元の、そのずっと下で動くそれは、容赦なくわたしの弱い部分ばかり攻め続けた。



