決して間違ってはいないであろう回答に、なぜか上の人はクツクツと、堪えきれなかった笑いを漏らす。本当のことなのにっ。
「ん? ……ああ、いやオレも興奮してるから。朝から刺激強いもの見せられて」
「だって、それは……」
「だから、責任とってね?」
「……え?」
――――――…………
――――……
……な。なぜこんなことに。
「オレ寝る前に浴びたけどねー」
「だったら必要なかったんじゃないかな!?」
責任云々の話のあと、いきなり抱え上げられてそのまま浴室に直行。……もう一回言う。なんでこんなことに。これ、責任を取るとかじゃなくて、ただ単に君が一緒に入りたかっただけなんじゃないのかい?
「まだ照れてんの?」
「慣れてわたしがスッポンポンでヒナタくんの前スタスタ歩けると思う!?」
「いずれは」
「いずれて……」
まだもう少し、浴槽に入るにはお湯が足りなくて隠れる場所がなく。隅っこで縮こまっていたかったのに問答無用で椅子に座らされたわたしはなぜか、背中を洗われておる。
「もう隅々まで見たのに」
「く、暗かった、もん……」
「そうだねー。だからさすがにここのホクロにはオレも気づかなかったなー」
「ひあっ……!」
つんって。腰の方を突いてくるし。もう恥ずかしさとか緊張とか、ごちゃ混ぜになって軽くパニック状態。なんとか前側だけは……と、必死に背中を丸ませる。
その間に「それじゃあ前側洗おっか」と言われたときの回避術を……懸命に探すけど、どこにも見つかりゃしない。
「それじゃ、オレは先に出とくね。しっかり浸かっておいで」
さてどうす、……えっ?
振り向いたときにはもう、ヒナタくんは浴室を出ようとしていた。……あ。お尻見ちゃった。
「ひっ、ひなたくん!?」
それにちょっと恥ずかしくもなったりしたけれど、それよりもどこか寂しげに見えた背中へ慌てて駆け寄ろうとすると、ズルッと滑りかけてそのままその背中に激突。
「っと。……ビックリした」
「ご、ごみぇん……」
また鼻が潰れたなとか。すごい密着してるなとか。そんな考えが、特に後者が大きく膨らんでしまいそうになるのを、背中をむぎゅーっと抱きしめることで押さえようとしたわたしだったけど。どうやら彼は、勘違いをしたらしい。
「そっか。そんなにオレと一緒にお風呂に入りたかったんだ」
「は、はいっ!」
「……え?」
「……あれ?」
たぶん、半分は混乱。もう半分は、ただの反射神経。



