それから、もうちょっとだけ彼は頑張ったけどやっぱり解けず。ちょっぴりおバカな共同作業。
けれど、それがおかしかったのかヒナタくんは、最中そして解け終わってからも肩を震わせてまた笑っていた。
「……怒って、ない?」
「ん? 怒ってるわけないじゃん」
「じゃあ、……んっ。なん、で……?」
「なんでか、って……」
はだけた浴衣の間からすっとおなかを撫でたかと思ったら、そう言いかけた視線が胸元で止まる。……す、すごい見てますね。よっぽど見たかったんだね。でも、ここまでじっと見られると、さすがのわたしもいたたまれなくて、我慢できずもう一回腕で隠す。
「……白。いや、ピンク?」
けれどその手はあっけなく布団に縫い付けられ、かと思ったらムスッとした顔でまさかのお色のご質問。
「えっと。……さ、桜色……?」
そして回答に満足していただけなかったのか、スタンドライトの方に手を伸ばそうとするので、嫌な予感にたまらず声をかける。
「よく見えないからもう少し明るく」
「ダメ」
「だったら部屋の電気点け」
「ダメったらダメっ。余計ダメ」
慌てて彼の浴衣を必死に掴むと「どれだけ必死なの」なんて笑いながら、「冗談だよ」と可愛く頬にキスをくれる。
けど、さっきの目は本気だった。わたしにはわかるぞ。
「ヒナタくん、あの……」
「ただ、オレの彼女すげえ可愛いなって、思ってただけだよ」
「えっ?」
「ただ、振り回されっぱなしで男として情けねえって思ってただけだよ」
「……ふふっ。そんなことないよ?」
「あるの。あなたバカだからわかんないだろうけど」
バカって……否定しないけども。けれど彼はやっぱりおかしそうに笑っていて、今度は掻き上げた髪の生え際へ、軽く音を立ててキスを落とす。
「そういう……空気とか雰囲気がすごく、照れくさくて恥ずかしくて。……あー。なんて言っていいかわかんない」
だから、やっぱりちょっとふざけちゃうんだよと。本当は今、口から心臓出てきそうなくらい緊張してるのにと。
恥ずかしさに染まる顔を見られるのが嫌なのだろう。彼は口元を手で隠すけれど、隠しきれていないのがまた可愛い。
「ふふ。一緒だ」
「絶対一緒じゃないし。オレのこと振り回しといてよく言うよ」
「そんなことないよ? すっごいドキドキしてるもん」
「うん。オレには負けてるけど速いね」
「おい君。どこを触ってるんだねどこを」
ピトって、いつもと違って遠慮がちだし。ちょっと手、震えてるし。……ま。人のこと言えないけど。
「わたしたちらしくでいいんじゃない? 何事も」
「この場面で普通、そういうこと言えないよ。しかも女の子が」
「どーもどーも」
「褒めてないけどね」はああ、と大きくため息をついて。むぎゅーっと強く可愛く抱きしめてきた彼は、今度はこめかみにキスを落とし、「わたしたちらしく、ねえ……」と低く呟く。
……あれ。なんだか嫌な予感……。



