再び外した視線の先にあるのは、先程までいじっていたわたしの誕生日プレゼント。
「これ、映写機みたいなものじゃないの?」
「それもできるスタンドライトってところ」
「へー。すごいね」
それが今は、やわらかい光を放っている。どうやら、一石二鳥なものらしい。
「そ、それはもういいから。こっち見て」
そうだね。それはまた今度、余裕があるときに詳しく聞かせてくだされ。わたしの。
「もし。キサちゃんに言われてなかったら……」
「いや、もうその話はやめよう? あとでキサのことはしばいとくから、今はオレの方見て」
「わたしは……なかったよ」
「え?」
なにも、考えていたのは君だけじゃない。
「わたしは、もう逃げるなんてこと、1ミリだって考えてなかったよ」
熱海の時から……宿題の答えがわかったときから、わたしの腹は決まっていたんだ。
「……それ、なのに」
「あおい? 何、言って……」
なんか、自分ばっかり期待してたみたいで。今わたし、すごい恥ずかし――
「――っ!? ひなたく」
背けた熱い顔を腕で隠していると、ガバッと上から強く強く抱き竦められ――「ぁぁああもうっ!!」……す、すごい唸ってる。
「……コンビニ行きたい……」
「……? 行ってくる?」
「意味わかって言ってないでしょちょっと黙ってて」
「あ。……はい」
それからしばらく抱きしめられたあとの第一声。
「なんでそんなこと言うの」
若干怒ってるし……。しかもそのあと、「もう知らないから」って拗ねながら浴衣の帯に手を伸ばしてくる。
「ひ、ヒナタくん怒って」
「うん」
「えっ。お、怒ってるの……?」
「うん」
「ご、ごめん。無神経なこと言った」
「違う、そうじゃない」
「え?」
何事だ? と思って彼の方を見ると、「これ、どういうこと」ってまた若干お怒り気味でそんな風に聞かれる。
「何これ。抵抗してんの」
「へ?」
むくれながら見せてくる浴衣の帯が、堅すぎて解けないらしい。
「ま、紛れもなく、犯人はわたしです……」
「でしょうね。何でこんなに堅いの。嫌なの。やっぱり嫌なの」
「い、嫌ではないですが、まあちょっとした抵抗ではありましたスミマセン」
「素直でよろしい」



