すべての花へそして君へ②


 再び外した視線の先にあるのは、先程までいじっていたわたしの誕生日プレゼント。


「これ、映写機みたいなものじゃないの?」

「それもできるスタンドライトってところ」

「へー。すごいね」


 それが今は、やわらかい光を放っている。どうやら、一石二鳥なものらしい。


「そ、それはもういいから。こっち見て」


 そうだね。それはまた今度、余裕があるときに詳しく聞かせてくだされ。わたしの。


「もし。キサちゃんに言われてなかったら……」

「いや、もうその話はやめよう? あとでキサのことはしばいとくから、今はオレの方見て」

「わたしは……なかったよ」

「え?」


 なにも、考えていたのは君だけじゃない。


「わたしは、もう逃げるなんてこと、1ミリだって考えてなかったよ」


 熱海の時から……宿題の答えがわかったときから、わたしの腹は決まっていたんだ。


「……それ、なのに」

「あおい? 何、言って……」


 なんか、自分ばっかり期待してたみたいで。今わたし、すごい恥ずかし――


「――っ!? ひなたく」


 背けた熱い顔を腕で隠していると、ガバッと上から強く強く抱き竦められ――「ぁぁああもうっ!!」……す、すごい唸ってる。


「……コンビニ行きたい……」

「……? 行ってくる?」

「意味わかって言ってないでしょちょっと黙ってて」

「あ。……はい」


 それからしばらく抱きしめられたあとの第一声。


「なんでそんなこと言うの」


 若干怒ってるし……。しかもそのあと、「もう知らないから」って拗ねながら浴衣の帯に手を伸ばしてくる。


「ひ、ヒナタくん怒って」

「うん」

「えっ。お、怒ってるの……?」

「うん」

「ご、ごめん。無神経なこと言った」

「違う、そうじゃない」

「え?」


 何事だ? と思って彼の方を見ると、「これ、どういうこと」ってまた若干お怒り気味でそんな風に聞かれる。


「何これ。抵抗してんの」

「へ?」


 むくれながら見せてくる浴衣の帯が、堅すぎて解けないらしい。


「ま、紛れもなく、犯人はわたしです……」

「でしょうね。何でこんなに堅いの。嫌なの。やっぱり嫌なの」

「い、嫌ではないですが、まあちょっとした抵抗ではありましたスミマセン」

「素直でよろしい」