「ハウス」
わたしゃ犬か▼
すごいガン飛ばしてくる人が、わたしを布団の上で待ってるんですけど……。端から見たら危険なのはわたしだけどね? 違うんだよヒナタくん。今、誰よりも危険なのは君なんだ。
「帰って、きて」
「うっ……」
なんだその、寂しそうな声は。表情はっ。ものすごい罪悪感だけど、そんなことしたら余計危ないんだって! 君が……!!
「お願い……あおい……」
「ハッキリ言う! 欲情した! たぶん!!」
「は?」
だ、ダメだぞ近づいたら。ましてやそんな、子犬みたいにうるうるした瞳で来ちゃったらもうダブルパンチで。わたし本気で警察呼ばれるようなことする絶対。
「……はあ。わかった、近づかない」
一瞬目が点になった彼は、それはそれは大きなため息をついたけれど、なんとか了承は得た。
ふう。これでなんとかヒナタくんの危機は去ったぞ。問題はこれをどうやって静めるかだけど。
「代わりに、宿題の答え」
「えっ」
「わかってたら……ていうか、そんな反応するあたりわかってるだろうから教えて」
「い、今……?」
「今。ここで。そこでいいから」
「え、っと……」
まさかの展開に頭が追いつかず。でも、少し不機嫌そうな、怒っているようなヒナタくんに歯向かえるわけもなく、素直に答える。
「な、習うより慣れろ……?」
そう答えると、胡座の上に肘をついてたヒナタくんは、ガクッと崩れた。
「ま、間違っちゃいない。間違っちゃないけど……」
「で、でもヒナタくんダメなんだよ。無理……なんだよ」
そう言っても、なぜか彼は頭を片手で抱えながら、ふはっと堪えきれなかった笑いを漏らしている。……この人、全然話聞いてないし。自分に危機感感じてないし。
だからもう、わたしが守ってあげないと。いや、危険なのもわたしだけど。
「い、今ね? 本当に洒落になんないくらい本気で君に襲いかかりそうだったんだよ。いやこれマジで。自分でもびっくりしたけど、わたしオオカミになりかけてたんだよ? 男の子だけじゃなくて女の子もオオカミだったんだよおぉぉ……」
「はー……笑った笑った。……ふはっ」
「聞いてやしねえ」
「いやだってさ、まさか……ははっ」
「拒絶されたのかと思ったらオレの方が襲われそうだったとか。というか解答……ぶは」って、いやいや拒絶したわけではないからね?
相当ツボったご様子だけど、いい加減自分の身は自分で守ってくださいよ。



