流れてきたのは、この部屋いっぱいに映し出された、みんなからのメッセージ。……そうか。今日はわたしの誕生日だ。
 生徒会はもちろん、みんなのご家族やユズちゃん、アイくん、カオルくん。お父さんお母さん、ミズカさんヒイノさん。わたしをよく知っている、わたしを助けてくれた人たちからの、お祝いメッセージだった。


(こんなの、いつ用意したんだか)


 てっきり、この旅行自体がわたしへのプレゼントだと思ったのに。さすがはヒナタくん。わたしが好きなもの、ちゃんとわかってるんだから。……ほんと、最高の誕生日プレゼントだ。


「……ねえ。ヒナタくん」


 その後、無事にみんなのメッセージは一時間弱で上映終了。どうやら連続再生になっているようで、また一からメッセージが流れ始める。けれど、一つだけ気になってることが。


「……ヒナタくんは?」

「……」

「おめでとうって、言ってくれないの?」


 今、隣で枕を抱きしめるように俯せている彼の姿は、この映像に映っていなかったのだ。まあ、みんなから『ヒナタは素直じゃない奴だから――』とかなんとか弄られるたびに、『うるさい』って声だけは入ってたけど。でも、肝心の彼氏さんから、お誕生日のお祝いを戴けていないのですが。


「撮って、ないの……?」

「……撮ってない」

「ええ!?」

「こともない」

「え? ど、どっち……?」

「無理矢理撮らされたってこと」


 おお。どうやらわたしの素敵なお友達たちがいい仕事をしてくれたらしい。……あれ。でも撮ったとしても、編集するの彼だよね? い、意味ないんじゃ。無理矢理って言ってたし。


「あるけど、なんで自分を見なきゃいけないの。ハズいじゃん」

「一緒に見たかったのにっ」

「オレは嫌」


 どうやら別バージョンがあるらしい。主にNG集。ヒナタくんのはそっちに入ってるみたい。
 恐らくだけど、みんなが何回も撮らせたと見た。やり直しさせたと見た。みんな、グッジョブ!


「ふふっ」

「……なに」


 今までの発言が完全に照れ隠しとわかった今では、恥ずかしそうに枕を抱いている彼が無性に可愛く見えて仕方がないのです。


「NG集は? 持ってきてないの?」

「……持ってきてない」


 これは恐らく持ってきてるな。でもすごく恥ずかしそうだから、初めてはお家で一人鑑賞といこうか。
 というわけで、今日のところはわたしが折れてあげようっ。


「ありがとう。ヒナタくん」

「……いいえ」

「今まで生きてきた中で、今一番最高に幸せかも知れない」

「大袈裟」

「それくらい。……それくらい、本当に素敵なプレゼントをありがとう」