取り敢えず、手探りで布団の上に寝転がった。そんでもって、無意味な抵抗とわかっているけど、着ている浴衣の帯をグイッとキツく締めておいた。
「……ねえ、ヒナタくん?」
真っ暗闇の中。わたしのいるところまでは届かないけれど、姿すら浮かび上がらないくらいのわずかな光で、彼は何かをしていた。
「変なとこ触ったらごめん」
「うわ!! ビックリした……って、変なとこ!?」
さっきまで向こうの方にいたはずなのに、物音立てずにいつの間にか近付いてきていた彼は耳元でそんなこと言う。心臓さんが止まるかと思ったぞ。
「暗いからって意味。大丈夫大丈夫。今から思う存分撫で回してあげるから」
「……なんかちょっと、言い方ヤダ」
そんなことを言った彼だけど、気遣いながらゆっくりとわたしの隣へと寝転ぶ。ほんと、素直じゃないんだから。
「んじゃ、おやすみ」
「寝るの!?」
さすがのわたしも、ちょっと突っ込み疲れたよ……?
「寝るって言ったじゃん。何する気だったの」
「いや、それそっくりそのまま返すからね?」
「え。寝る準備」
「……ヒナタくん、こんなに真っ暗じゃないと寝られないの?」
「そうそう」
「まわりにものがあったら寝られない? 自分の部屋いっぱいもの置いてあるのに?」
「何言ってるの。オレじゃなくてあおいの邪魔なんだって」
「へ?」
「あまりの寝相の悪さに、物壊して弁償するかも知れないじゃん。その事前準備」
「……わたし、キサちゃんとユズちゃんに比べたら寝相悪くないと思うよ」
現にあなたと一緒に寝たことあるじゃない。寝相そこまで悪くなかったでしょわたし。
というかそもそも、わたしが家具破壊して回るほど寝相悪かったら、その隣で寝てるあなたも大怪我するよ!? わかってる?!
「んじゃ、おやすみ」
それも覚悟の上、か。
いやいやいや。納得してる場合じゃないから。
「お~い。ヒナタくーん。……ヒナタく~ん。ヒナタ……」
え。まさかもう寝た……?
ちょっとちょっと。返事も聞こえなければ、寝息がかすかに聞こえてきてるんだけど!? どういうこと!?
暗闇の中、手探りでヒナタくんを探……あ。頭発見。洗い立てのふわふわの髪を撫でても、突いても、引っ張っても。……無反応。
耳元で小さく囁いて、ふーっと息をかけても……反応なし。それじゃあ首をこちょこちょこちょ……やっぱり反応なし。
(よしっ。こうなったら……!)
彼の脇目掛けて! そしてわたしの命を賭けて! 両手をズボッ――――



