「じゃあ、ちょっと待ってて」
沈めようとしたら、布団の上に倒れ込んだわたしにもう一度可愛くキスをして、彼はなぜか立ち上がってしまう。……ま、待ってて……とは??
「あ、の。ヒナタ……くん」
「すぐ帰ってくるから」
「あ。……わ、わかったっ」
彼は、とっても嬉しそうに笑って部屋を出て行きました。そして残されたわたしは、なんだかとっても恥ずかしくなってきました。……だって、これじゃあまるで……。
(わわわ、わたし、期待、してたみたい……っ!?)
穴があったら全力で入りたい▼
そんないかがわしいことを考えていたわたしは、穴を掘る代わりに布団にぐるぐるぐる~。簀巻き状態になったところを、程なくして帰ってきたヒナタくんに、壁にぶち当たるまで転がされました。恐らく足で。
「何やってんの」
「あ、穴の代わり……です」
「は?」
お、おかしいな。さっきまでものすごい甘~い雰囲気だったのは気のせいなのかな? もはや、そう思っていたのはわたしだけなのかな……? やっぱり変態だったか、わたし。
「いいから起きて。それで、ちょっとごめんけど手伝って」
「え? て、手伝う……?」
「うん」
よく見たら、彼の手には地球儀のようなものが。ど、どうしたヒナタくん。一体今から何をしようと――――
「この部屋にある家具全部隣の部屋に移して」
「……え?」
「制限時間は10分ね」
「ホワッツ!?」
「あおいならできるよー。頑張ってー」
「な、なんだ、そのやる気のない応援は……」
「ハイ残り9分30秒~」
「ら、らじゃあ……!!」
よくはわからんが、染みついた下僕の血が騒ぎに騒ぎ、せっせと布団が敷かれた部屋から隣の部屋へと、ローテーブルやスタンドライト、備え付けのクローゼッ――――
「それはいい」
「え? でも家具全部って」
「できる。確かにあおいならそれもできるだろうけどそこまで求めてないから。もの壊して回ったらダメ」
「……ら、らじゃあ」
どうやらクローゼットは違ったみたいだが、【家具全部】と言ったヒナタくんの意図はこの部屋を何もない状態にしたいらしい。……ふ、布団は……?
「布団持ってってどこで寝るの」
「そ、そうですよね」
取り敢えず布団はいいらしい。というかヒナタくん。あなたは一体今から何をしようというの。
「え? 寝るんでしょ?」
「そうだけどね……!?」
そしていつの間にかガラス戸のカーテンも引かれ、部屋は真っ暗な状態に。
「ひ、ヒナタくん。今から一体何が……」
「だから寝るんだって」
うんそうだね。さっきからそう言ってるからわたしもそうだと思ってるよ? それに、伸ばした手が全然見えないほどびっくりするくらい真っ暗だし、ヒナタくんがどこにいるのかもわかんないし。もはや寝ることしかできないしね。
「……あ。もしかして電気があった方がよかった?」
「え? ま、まあそりゃ少しはないとヒナタくんが見えな」
「そんなにオレに裸見せたいんだね」
「……!? い、今そんな話してな」
「しょうがないなー。だったらカーテンも全部開けて電気もつけて」
「いい! いいですゴメンナサイ!!」



