すべての花へそして君へ②

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【わたしに、何か隠してるんでしょう?】


 そう話を切り出すのを、何度も何度も躊躇った。このときだけじゃない。彼が悲しそうな顔をするたび、『寂しい』と、言う度、『どうしたの』……って。いつもいつも、言おうと思って言えなかった。


『そっか~残念。折角、絶対に成功するって噂の場所まで行って、もう一回告白しようと思ってたのにー』


 言えたのは、シズルさんからそんなことを聞いたから。本当は、デートのお誘いを断るついでに、海で言っていた恋人のスポットのこととか、いろいろ聞いてみようと思ったのだけど……。
 それでも、そんなジンクスに縋らなければいけないほどわたしには、聞く勇気が持てなかった。彼が……ヒナタくんが、あまりにもつらそうな顔をたまに見せるから。それだけ深刻なんだってことが、安易に聞けるようなものでも答えられるものでもないと、わかっていたから。

 けれど聞かなければいけなかった。きっと、わたしの知らないところでもそんな顔をしているのだろうから。


『……隠してる、って。一体何を』

『それをわたしが聞いてる』

『別に、オレは隠し事なんて』

『じゃあなんでそんな顔するの』

『……そんなって。どんな』

『いつもどこか寂しそう。悲しそう。……苦しそう。つらそうだよ』

『そんな、わけ』

『あるから聞いてる』


 どうして寂しいの? どうやったらヒナタくんを、そのつらさから解放してあげられるの……?


『……わたしじゃ、頼りない……?』


 一分でも一秒でも早く。全部じゃなくていい。ほんの、少しずつでもいいから。わたしは、大好きな君の助けになりたいのに。
 この時ばかりは、たとえジンクスに縋ってでも言わないとと、聞かないとと思っていた。わたしが怖じ気付いてたらダメだって。彼をそんな苦しみから助けてあげなきゃって。今度はわたしが、助けてあげるんだって。

 そう思っていたんだ。強い強い腕の中に収まる、ほんの一瞬前までは。


『ひなっ』


 その抱擁はただ痛くて。呼吸が止まりそうなほど苦しくて。


『――っ。……ご、めんっ』


 この腕の中に収まる一瞬。ほんのわずかだけ見えた彼の、悲痛で歪んだ顔に、……聞いてしまったという後悔だけが胸を支配した。
 その『ごめん』に、わたしは結局、返す言葉が見つからなかった。