カラカラカラと音を立てて外に出るとすぐ、そんなことを言われる。いつから見てたんだいつから。
「寒くない?」
「ん? うん。全然平気!」
夜と言っても真夏だし。それに、夜の涼しい風が逆上せかけたわたしには心地良い。けれどヒナタくんは、その答えが少々気に入らなかったみたいだ。ほっぺたが少し膨らんでいる。
どう答えたらよかったのだろうか。あらゆる答え方を頭の中で巡らせていると、ツンと着ている浴衣を軽く引っ張られた。
「……寒く、ない?」
本当に少しだけ、腕を開いているように見える彼の同じ言葉には、ちょっとだけ寂しさが混ざる。きっとまた、わたしがいなくて寂しかったのだろう。そう聞いたら「……ちょっとだけ」って素直に返ってくる辺り、ちょっとではないらしい。
「もうっ。だから一緒に行こうって言ったのに」
「え。混浴だったの? だったら行ったのに」
「……そういえば混浴の暖簾掛かってたかも」
「え。入ってないよね?」
「いやいや、混浴もあったよって話」
「今から行こっか」
「また今度、でしょ」
そんな風に切り返しながら控えめに差し出されていた彼の手を握ると、嬉しそうに笑いながら「それは残念」って。残念そうじゃない彼は、そのまま繋いだ手を引いてわたしをすっぽり、腕の中に閉じ込めた。
……あったかい。
やさしいぬくもりに上から下まですっぽりと包み込まれるそれは、まるであったかい毛布のよう。そう感じてしまうくらいにはどうやら、わたしも寒かったらしい。
「上。……見てみて」
そしてどうやら彼は、星空を……月を、見ていたらしい。
「熱海で見た星空も綺麗だったけど、ここも綺麗だなって思って」
「……そっか」
彼に倣って見上げた夜空は、まるで宝石箱みたいにキラキラ輝いて見えた。
「……ねえ、あおい」
「ん……?」
「あのときのこと。……今、少し話してもいい?」
……いや。確かに星たちは瞬いていて、キラキラと光っているけれど――……
「なんで遠慮するの? 聞きたかったから嬉しいよ」
「だって、折角の旅行なのに」
「折角の旅行なのに、先にぶち壊したのはわたしの方だよ」
「それは! ……オレが、悪いから」
「悪くないよ? 悪くない。ヒナタくんさえよかったら、教えてくれる?」
「……でも、話すって言ってもそんなには……」
「大丈夫。ほんの少しでいいよ? 話してくれるならお話、聞きたいな」
「……ありがとう」
今にも空から零れ落ちてきそうなそれは、まるで彼の代わりに泣いているようだった。



