「意地悪しないで」と、真っ赤な顔して必死に訴えかけながら再び距離を取った彼女の両手は臨戦態勢。ごめんごめん。さすがに冗談言いすぎたって。もうやめますすみません。
……さすがにここでやめとかないと、首以外もボキボキに折られる。
「チラ見せでもいいよ?」
「もうっ。しつこいぞ!」
しつこいって……その通りだけど軽くショックだな。まあ今後は発言に気をつけよう。
(んーでも、このままこいつのペースに合わせると一向に進む気配が……)
まあ、ゆっくりと決めたのはオレ自身。焦る気持ちを必死に押さえ込んで、これからと戦うことにしよう。
ふと窓の外を見ると、だいぶ暗くなってきていた。腹も空いてきたことだし、ひとまずは晩ご飯を作りに行きましょうか。
「っと。……どうした?」
ベッドから立ち上がろうとすると、背中に軽い衝撃。きゅっとシャツを掴み、彼女はなぜかオレを引き留めてもごもごと何かを呟いている。
「……おーい。あおいさん?」
「い。嫌なわけじゃない、から……」
聞こえてきた言葉に、ドクン――と大きく胸が鳴った。
「……オレ、そんなにがっついてた?」
「え。……自覚ないの」
「自覚はあるけど拒否ったから」
「い、いや。がっつかれるのが嫌というわけではないんだけど」
「まさか本当に可愛くない下着つけてんの? それはそれで興味あるんだけど」
例の毛糸のパンツ履いてるわけでもないだろうしこの時期。可愛くない下着……って、オレ別に何履いてても幻滅しない自信あるけど。
「まだ……その、心の準備ができてません」
あおいのことだし、だいぶ斜め上の回答の心構えをしていた。けど、真っ当な答えに逆にびっくりしてしまった。
「じゃあ、可愛くない下着の下りは嘘だったと」
と、同時に必死に考えたであろう可愛い嘘に、じわりと胸が熱くなる。まあ背中の人は申し訳なさそうに「ごめん……」とこぼしているけれど。
「別に、嘘つかれて嫌だったわけじゃない。寧ろもうちょっと早く止めて欲しかったくらい」
「え?」
「つまり、心の準備ができてないのは、あなただけじゃないってこと」
「……?」
首を傾げながらパチパチ瞬きしながら、不思議そうに彼女は後ろからこちらを覗き込んでくる。……こいつと付き合って一番苦労するのは、できれば言いたくないことまで言わされてしまうことだな。絶対。
「ヒナタくん?」
「さすがに、がっついたけど今日早速本番するつもりはオレには全くありませんでした」
「……? うん」
「えっ。……わかってた?」
「いいえ、続きを促しています」
「えー……」
続き……つったって。あーもうっ。
「うわっと……!」
「あおい、ちょっと太った?」
「おお、そうなんだよ。ちょっとこの辺の二の腕が……って! ヒナタくん続きは!?」
「小っ恥ずかしいので言いません言えません言わすな」
「お、おう……。すまない……」
「続きは次までの宿題にしておきまーす。キサとかに聞くのも無しね」
「ラジャ!」
「それじゃあひとまず腹拵えしましょう」
背中に乗った彼女が、「美味しく作るからね~」と楽しそうな声を上げる。……やれやれ。宿題の答えがわかったときはどんな反応をすることやら。



