すべての花へそして君へ②


 寝不足が祟ったのか。それともこのぬくもりと穏やかな時間のせいなのか。目蓋をそっと下ろしていると、いつの間にか眠りの淵に落ちていた。
 再び目蓋を上げたときにはもう、彼女の手元からアルバムや写真はなくなっており、案の定「起きた?」なんてやさしい声がかかる。


「……寝てた?」

「声かけても返事がなかったから、どうしたのかなって」


「そしたらちっちゃく寝息が聞こえたから……」と、そのままの状態で寝かせてくれていたらしい。


「もういいの?」

「ヒナタくんはいいの?」


 オレは……もう十分見ましたから。あなたの知らないところでカナタさんに捕まっていたので。ま、楽しくなかったと言えば嘘になるけど。
 でも、今はそれはいいんだ。時間はかかったけど、やっと見せてあげられた。あんなにも嬉しそうな笑顔が見られた。……ほんと、よかった。


「ちょ、ちょっとヒナタくん」

「ん?」

「い、いや。ん? じゃなくてだね……」

「……どうしたの」

「いや、……えーっとだね」

「なに。はっきり言いなよ」

「じゃあ言おう。どこに手を入れようとしているんだ君は」

「ブラウスの中」

「やめなさい」


 だって、もう我慢の限界なんだもん。正直な話、我慢した方だと思う。自分でも、【よく我慢しましたで賞】なんて賞状を贈りたいくらいだ。

 最後に、こいつの唇に触れられたのはいつだったろう。最後に、こんな風に抱き締めたのはいつだろう。最後に、こんな風にこいつの柔肌に触れたのは――――……


「ちょちょちょちょ!? ちょい待てーい!!」


 最後に、こんな風に押し倒したのはいつだったかなー? たぶん皇別邸以来かなー。


「な、なんでニヤニヤされておられるのでしょうか……?」


 あっさりとオレに押し倒されたこいつはきっと、今頃ベッドをチョイスしたことを後悔しているだろう。後悔先に立たず。残念でしたー。


「落ち着こう。ヒナタくん、ちょっと冷静に」

「オレ? すっごい冷静だけど」

「これこれ。この手のどこが冷静なんだね」

「ん? ……冷静でしょ? 上手に外せてる」

「淡々としないで。淡々に」


 そんな会話をしている間も手は休めず。拒もうとする手を腕をかいくぐり、上から下までそう時間もかからず無事に制覇。……キャミソールか。ちょっとこれは今邪魔かなー。


「だ、だめ」


 けれど、さすがにそれをめくる手は止められてしまった。
 と、いうことはだ。どうやらオレのしたいことがちゃんとわかってはいるらしい。下からすごい睨むように見られてるけど。
 それでも可愛い彼女に小さく笑い、髪をかき上げながら耳元へ口を寄せる。


「……見せて、全部」