「……何も、されてない?」
「えっ?」
「ははっ。そんな酷いことするように見えるんだねー俺」
「ええ!? な、何もされてないよ! してないよ!?」
いや。こいつ以上に強い人、オレ知らないけどね。同等ならミズカさんがいるけど……あおい相手に本気とか出せないだろうし。
……それでも。“もしも”のことがないとは、限らない。
「怪我がないなら。無事ならそれでいいよ」
「……ひなたくん」
ぎゅうと鳴りそうなほど腕の中に閉じ込めると、「心配性の優しい彼氏さんだね」とか言ってくるもんだから、もう一回文句の一つ言ってやろうかと思ったけど。
「ふふっ。はい! 自慢の彼氏さんですっ」
……なんて。嬉しげに抱き締め返してくるもんだから。
「……そう思うならちゃんと連絡くらいして」
「はーい。ごめんなさい」
しょうがないから、今回のことは大目に見てあげる。
――――――…………
――――……
「早く! ヒナタくんはやくっ」
「ちょ。……どこ行くの一体」
「ついてくればわかるからっ」
なるべく究極の方向音痴さんにはついて行きたくないんですけど。取り敢えずは、来た道をオレが覚えておくから帰れないことはないけどさ。
あれから、大学生っぽいシズルって人とはそこで別れ、何でか知らないけどオレは、あおいに連れ回されている。
「ここでね? レンくんとジェラート分けっこしたの!」
「……ふーん」
……うん。絞める。
「それで、ここで猫さん泣いてた!」
「……ふーん」
……チカだな。



