パンッ――――。


「……あ!」

「あとはコツ掴んだらお前ならここの商品全部取れんだろ」


 クマさんの入った箱の角に見事命中して、ゆらゆらと揺れたそれが、ちょっと大きな音を出して落ちた。
 お、おお……!


「すごいすごい! ツバサくんすごい!!」

「残りの四発頑張れよ」

「ええ!? もう教えてくれないの!?」

「(身が保たねえっつの)」


 ぶつぶつ何かを言ったツバサくんは、違う場所へと歩き始めていた。うえー……。やっぱりあなたもわたしを置いていくパターンですか……。
 ……よし。こうなったら残り四発で絶対にものにしてやる!


「ツバサくん見て見てー!」

「おおすげえすげえ」


 そして残りの四発ともに命中するという。自分の腕が恐ろしいね、うん。


「それで、これはツバサくんの分っ」

「……は?」


 取った手の上にちょこんと乗っけるのは、彼が取ってくれたクマさんの、ちっちゃいキーホルダーバージョン。


「教えてくれたお礼と、今日の思い出に」

「……あんま、こういうのよくねえんじゃねえの」

「どうして? わたしはあるのにツバサくんがないのはおかしいでしょう?」


 そう言って見せびらかす箱から出したクマさんとその他。それを見て彼は「しょうがねえ奴」って言いながら肩を竦めた。どういう意味かね。


「あとから日向が文句言っても知らねえぞって話」

「ヒナタくんはお兄ちゃんに甘いから。だから文句は言わないよ、絶対っ」

「なんだそれ」


 お前らそれでいいのかよって。バカだなお前らって。楽しそうに笑ってたからよかった。
 ……まあ、お兄ちゃんには文句言わないだろうよ。わたしには来るだろうけど。そうなったら今度は、彼にも何かプレゼントすればいいだけのことさ!


「しょうがないよ。だって、わたしはみんなのことが大好きなんだもん」

「一番は?」

「ははっ。ここでヒナタくんって言わなかったら拗ねちゃうよ、きっと」

「違いねえ」


 作ることが怖くなくなった思い出。残すことが怖くなくなった過去。
 ……だからね? 思う存分楽しみたいんだ。今までできなかったこともそう。これから、したいと思うことだってそう。大好きなみんなと、わたしはこれからもずーっと、一緒にいたいからねっ。