「……それじゃあアカネくんは道場を継ぐの?」

「うんっ。まあそれは先の話で、大学か専門に絵の勉強しに行ったあと……かな?」


 それから泣き虫ネコさんは日曜戦隊にお礼を言って、旅館の方へと帰って行った。……あ。写真のこと、ついでに言おうと思ってたのにすっかり忘れてたや。ヒナタくんに虐められないといいけど。


「そっか! ……よかったね?」

「うんっ! ありがと、あおいチャン」

「……わたしにお礼言うの?」

「だって、あおいチャンのおかげで言えたようなものだもんっ」


 そんな、キラッキラの笑顔で言われたんじゃ、受け取らないわけにはいかないじゃないか。……まあ、もらったお面をばっちりつけているので、笑顔はわたしの想像でしかないのだけれど。


「……それじゃあ、わたしの方もありがとう」

「え……? うんっ。どういたしまして~」


 そうやって、笑ってくれて。笑いかけてくれて。ありがとう、アカネくん。


「ところであおいチャンの将来の夢は?」

「ヒーローになってこの世界を悪の組織から守り抜くことだあー!」

「おお。そうなんだあ!」

「えっ、ちょちょ。アカネくんそこは突っ込んでもらわないと」

「え? だってあおいチャンなら何だってできそうだし!」

「……ハハハ」


 最近になって、ふと思う。みんなの中のわたしのイメージって、一体どんなんなのだろうかと。


「……葵? こんなところで何ぼうっと突っ立ってんだよ」

「え? ツバサくん待ってたんだよ?」

「え」

「だってツバサくんとだけだもん。あと一緒にお祭り回ってないの」

「そ、そう……」


 というのは実は本当の話。あのあとほんのついさっきまで、アカネくんとお話ししてたんだけど……。


『……あ』

『ん?』


 そんな声を出した彼の視線の先には、今は目の前にいるツバサくんがいて。その彼が、どうかしたのかな? って思ってたんだけど……。


『お祭り。一番楽しみにしてたんだよ、つばさクン』

『え? ……そうなの?』


 なんだか意外だなって思ってたら、『あおいチャンと回れるのをね?』って、茶目っ気たっぷりに言ってくるもんだから、嬉しいような気恥ずかしいような。


『だから、ここはお兄さんのおれが譲ってあげないと』

『え? お、お兄さん……?』

『そお! 半年違いの弟なんだあ』

『ははっ。そっかそっか』


 どうやら、お兄ちゃんが実は子どもっぽいっていうことは、アカネくんにはバレバレだったみたい。みんなよく見てるんだなあ。


『昨日なんかね、かなクンに負けてものすごく悔しそうだったんだから』

『そ、そうなのか』

『そうそう。しまいには、かなクンがなんだか楽しそうに笑って帰ってきたもんだからものすごい荒れてね?』

『そ、そうなんだ……』