一応さ、こんなでも決めてんだ。桜を卒業して、茶道の道に入って。そんでもって、ババアとこれからもずっと、一緒にいられるようにって。
「だから……さ、ばあちゃ――『まあどがなこと言ったってもうさせんけどな』……はあ!?」
折角こっちがしおらしく言ってんのに。こんのくそババア……!!
『言うたやろ。私の我が儘なんやって』
「……ババア」
『茶道なんかやってみんさいね。一緒におられる時間ないやろ』
「……でも、つくったら」
『嫌や』
「どんだけ我が儘なんだ」
『やから言うたやろ。私の我が儘なんやて』
大好きな孫と、ばあちゃんはいっぱいいろんなことしたいんや。
「……んなこと言って、簡単に折れると思ったら大間違いだからな」
『何言っとんね。洟啜ってからに』
「はあ? とうとう耳までバカになったか」
『あんたのがな』
……ああ。ほんと、そうかも知んねえな。オレの耳にも、電話の向こうで洟啜ってる音が聞こえんだから。
「……帰ったらまた話そ。ばあちゃん」
『明日何時に帰ってくるんね』
「ん? 夕方には帰るよ」
『なんねえ。もうちょっとゆっくりしてきいや』
「暑いからって、腹出して寝んなよ」
『そっくりそのまま返したるわ』
寂しいなら寂しいって、素直に言やあいいのに。……ま、オレもか。しょうがない。だって、家族なんだから。
オレの泣き虫も素直じゃないのも……きっと、ばあちゃんに似たんだろうよ。



