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『……は、はあ!? ちょ、どういうことか説明しろよ!!』


 アキとの下校中。今から帰るにもかかわらず掛かってきたババアの電話に、嫌な予感がした。


【あんたに高千穂は継がせんことにしたから】


 それだけ。本当にそれだけを言って、ババアは電話を切った。オレが何を言っても。電話先で喚いても。


「……はあ」


 そのあとすぐ、帰っても何を言ってもそのことに関しては何も喋らなくて。ババアと、会話自体そんなにしなくなってしまった。


「……どうして、だよ」


 確かに、力不足なのは十分わかってる。……けど、今からじゃ遅いってのかよ。もう、ダメなのかよ。
 アキとアオイと別れ、海がよく見える高台に来ていた。あのまま帰ったところで、どうせ様子がおかしいのは目に見えてるし。みんなに心配させたいわけじゃねえ。
 いつも助かってばっかだけど、みんななんだかんだでよく見えてる奴らばっかだから。なかなか一人になろうにもなれねえし。


「……さすがに、この顔直してからじゃねえと戻らんねえわ」


 真っ黒な海は、まるでオレの心の中のようだった。


「レッド! 大変だ! こんなところに助けを求めている猫さんがいるぞ!」


 ……は?


「おおそれは大変だぐりーん! 今すぐ助けてあげなければっ!!」


 ……え。


「ちょちょちょ、ちょい待てい! これのどこが“助ける”なんだ!?」


 なぜか知らないけれど、日曜日の朝のヤツでお馴染みのヒーロー、『ヒーラー・シャイン』のレッドに羽交い締めされた。お前らの敵は、悪の結社『ザ・ザンギョー』だろ。一般市民を拘束してどうすんだっ。
 ていうかそれオレらの世代っ。よくありましたねそのお面……。


「よしっ。通信機をゲットしたぞレッド」

「おいこら待て! なに勝手に人のスマホ奪ってんだ!!」


 やべえ。このヒーローたちマジやべえ。完全に悪の結社たちに乗っ取られてるパターンのヤツじゃねえの――


「……あ。もしもしフジカさんですか? お久し振りですっ。どうみょ、……朝日向あお……、日曜戦隊『ヒーラー・シャイン』のグリーンでありますっ!」


 おい。言い直ししすぎだぞ。……って、それどころじゃねえ!!


「あおいっ、かえ、せ!」

「君は大人しくしていましょうっ」

「離せよアカネ! お前ら何企ん――」

「そうそう。そうなんですよ~。チカくんビービー泣いちゃっててー」