すべての花へそして君へ②


「まさか、全てのスーパーボールを掬ってしまうとは……」

「やろうと思えばできるもんだね!」


 ポイには種類があって、お客さんによって気付かれないようにその薄さを変えて渡したりするんだ。これも商売の駆け引きの一つ。
 でも先程からずっと見ていたけれど、お店のおじさんが渡していたポイは、その通常のものよりも薄く脆いものだった。恐らくは売られているものではなく、個人で作られたものだろう。これに懲りて、きっともうおじさんはここには来ないでしょう。


「おねえちゃんおにいちゃん、ありがとう!」

「ん? ……いいえ。どういたしまして」

「おれたちは何もできなかったけどねー」


 たくさん取れたスーパーボールを子どもたちに分けてあげると、とても嬉しそうに笑ってくれた。そうそう。子どもは泣かせちゃいかん。笑わせてあげないとねっ。
 よしよしと頭を撫でてあげると、また嬉しそうに笑って……ああ。どこのどなたか存じませんが、天使のような子を産んでくださってありがとう。そして早く連れ戻さないと可愛いものに目がないわたしが、何をしでかすかわかりませ――


「かわいいっ!」

「うわ!」

「……ははっ。くるしいよ~」


 そして結局耐えきれずにむぎゅっと。ああ……。ぷにぷにで気持ちがいい……。


「お姉ちゃんとお兄ちゃんに! これのお礼があるのっ!」

「「……ん?」」


 ――――――…………
 ――――……


「「「すきなのどーぞ!!」」」


 アイくんとカオルくんとはお別れして、わたしとアカネくんは子どもたちに連れられとある屋台の前へ。どうやら彼らの親御さんたちは、こちらで出店を出していたらしい。なんでも、スーパーボールのお礼に、この中から一枚選んでいいよと。


「こんなもんでよかったらどれでも好きなの取って――「「いいんですか!?」」……えっ?」


 あまりにも大きな声に、お店の人もとい子どもたちのお父さんは驚きのあまり目を丸くしている。


「じゃあわたしグリーンっ」

「じゃあおれはれっどっ!」


 けれど、本当に喜んでいたわたしたちを見て彼も、そして子どもたちも、一緒に嬉しそうに笑ってくれた。
 わたしたちは、お礼にとっても素敵な笑顔を頂戴したのだった。