でも……そっか。したいと思ってたことを無理矢理そうされたら、苦しいよね。
ちゃんとわかるまでは……さ。
「……近すぎちゃうと、わからないこと、あるからね」
「葵?」
「アキラくんもね?」
「ん?」
アキラくんの髪をわしゃわしゃと撫でる。くそう。いつ触っても憎たらしいほどさらさらだな。
「アキラくんの思いは、皆さん知ってるのかな」
「ん? みんなって?」
「シランさん。カエデさん。シントにサクラさん」
「知ってると思う」
「結構ね? 自分が思ってても、相手は知らないことってあるんだよ」
「……そうなのか?」
「そうだよ? アキラくんが、シントと一緒に皇をきちんと立て直したいなんて。そんな嬉しいこと思ってるなんて、シントもシランさんも、カエデさんもサクラさんも知ってる?」
「……言ったら言ったでうるさそう」
「ははっ。確かに。……でもね」
言わないまま、全てが伝わってきたら。……わたしだって今、こんなに悩んでないんだ。
「……葵?」
「……デリケートな話は特に。きちんと言葉にしておかないと、後々後悔するかも」
「……そうだな」
「だから、アキラくんもちゃんと話してあげてね? それから、……ちゃんと聞いてあげて」
「葵がそう言うってことは、シン兄は何か隠してるんだな」
「あちゃ。バレちゃったか」
「わざとだろう?」
「あちゃちゃ。バレバレですか」
「葵にしてはかなりオープンだったからな」
小さく笑った彼は、隠されていることを知ってもやさしい顔のままだった。
「何をかまではさすがにわからないけど、何かあるんだろうなとは思ってたから」
さすが。次期当主になれる器を持ってるだけある。
「だから今度、逃げ場を封じておいて、抱きつかれる覚悟をしてからシン兄を尋問することにするよ」
「ええ!? お、お兄にそんなことを……?」
「それくらいやってもシン兄なら自力でなんとかするから困るんだ」
「……それは、遠回しに彼を強くしたわたしへの文句ですか」
「そうとも言う」
「もうっ」
でも、きっとアキラくんなら大丈夫。だって、昨日はサラッと負けちゃってたけど、そのシン兄を押さえ込めるくらいには強いからね。わたしが保証しよう。
「それでもシントが逃げようとしたら、いつでもわたしを呼んでくださいな」
「シン兄のことだから、俺に告げ口したこと怒ると思うけど」
「その時はその時さ。わたしは別に、隠しておくべきことじゃないと思うし、どっちかって言ったらアキラくんは知っておかないといけないと思うもん」
「……わかった。今度ちゃんと話してみるよ」
「俺だけ除け者なのは嫌だからな」と。そう言った彼の顔は、少しだけ寂しそうで幼くて。弟の顔だった。



