すべての花へそして君へ②


「オレはしっぽ派」

「え?」

「お前が聞いたんだろ?」

「いやそうなんだけど、唐突だったし……」


 てっきり、アキラくんと同じ頭かと。


「知らねえのか? しっぽから食ったら足が速くなるんだよ。頭から食ったら、頭が良くなんだよ」

「それってししゃもの話じゃない?」

「気分の問題だろ」


 ニカッと笑ったチカくんは、ペロリともう食べてしまっていた。……そういえば、わたしがチカくんに渡したのは……。


「チカくん足速いのにまだ足速くなりたいの?」

「強い奴と戦うことになったら、逃げることも考えねえとな」

「……頭渡した方がよかったかも」

「どういう意味だよ」

「そんなところに気を回さなくてもいいよって言ったんだよ?」

「べ、……別に、回したわけじゃねえ」

「ははっ。それじゃあそういうことにしておいてあげるね」


 そうこうしていると、お金がもらえたアキラくんが帰ってきた。
 ……えらい。たい焼き一匹分だ。カエデさんさすが。


「葵! 何味ならいい?」

「どれでもいいよ?」

「わかった!」


 あの子、本当にアキラくんかな。小っちゃい子どもに見えるんだけど。あの見た目だから若干お店の人も違和感感じてるし。


「おかしいな。オレが尊敬してたのはあんなアキじゃなかった気がする」

「今頃気が付いたのかい……」


 あんまり表情は変わらないけど、それでも嬉しそうに目を輝かせながら、無事に買えたらしいアキラくんが帰ってきた。
 そんな嬉しそうに頭に齧り付くアキラくんに笑いながら、チカくんにもあのことを聞いてみることに。


「チカくん。よければでいいんだけどね?」


 これからについて少し、参考程度にまで。


「将来?」

「うんっ」

「取り敢えずタンスから逃げる」

「え」

「だからしっぽから食った」

「えっ」


 それってあれですか……? わたしに誓った、あのネクタイの件のことですかい。


「ヒナタの野郎が、卒業記念にタンス送りつけるとか言ってくるんだよ」

「え」

「そもそも小指ぶつけたら痛えだろ? なんとしてでも逃げねえと……」


 ……そっか。ヒナタくんにもその話をしたんだね。
 まあ、彼の場合は天の邪鬼だから。ほんと、チカくん大好きなんだなー。ちょっと妬けるぞ。


「……将来は、ばばあの跡を継ぎたい」

「ははっ。そっかそっかー」


 フジカさんのこと、本当に大切にしたいんだって。前もそんなこと言ってたね。


(……あれ。でも……)


 なんでチカくん、ちょっと苦しそうなの……。