ひとつ、ふたつ、みっつ。啄むようなキスをして、二人して笑い合った。
「……決して、苦しいのが嫌ってわけじゃないんだけど……」
「ん?」
「今みたいな可愛いのとか、すっごいやさしいのとか。されたらすごい、恥ずかしいけど嬉しい」
「……え」
いきなり何を言い出すかと思えば。
「ヒナタくんは……いや?」
嫌だったらそもそもキスしてねえっつの。
そんな可愛い彼女に小さく笑って。今度はさっきよりも少し長めに、押しつけるような口付けをする。
「ん。……これも好き」
「オレは、ちょっと物足りない」
「それは……わたしもだけども」
「じゃあ、深いのは?」
「……嫌いじゃないけど……」
「……? けど?」
「……長くたくさんは、まだできない」と。ぼそぼそ呟きながら、恥ずかしそうに彼女は身を捩る。
(またそういうこと言う……)
攻撃を食らった安直なオレは、彼女の肩を借りて理性をフル稼働。……わかってやってんなら許さないからな本当に。
そこでゆっくりと吸い込むと、やさしいやさしい、好きな彼女の匂いで満たされた。……今日もなんとか、柔な理性が頑張ってくれた。
はあとひとつ、安堵の息を漏らす。
(……ん?)
ここで頭を撫でてくるか、どうしたのって聞いてくるのがいつものパターンだ。でも、彼女からは何も反応がない。
もしかして、この前頭ぐちゃぐちゃにされてしばらく口利かなかったこと気にしてんのかな。いや、だって正直何本か天に召されていったし。この人加減ってものを知らないから……。
でも、本当に気にすることないのに。そうやって慌てたり焦ったり、いろんな表情見てたいからやってるだけで、嫌なわけじゃないし。
ていうか、構って欲しいんだってば。そのときだって……今だって。
(……手首)
でも、ふと落とした視線の先。彼女は、自分の手首を握っていた。



