「お~い。お前さんたち、行くぞー」


 そんな会話を、未だ駅の広場でしていたのでごった返し。みんな無駄にイケメンさんなので、この辺一帯は女子・女子・女子!
 ……でもね、言ってあげたい。会話はとってもしょうもないことばっかだし、子どもだし、頭いいくせにおバカちゃんばっかだよって。彼女たちに現実を教えてあげたい。


「ま。そんなことはどうでもいっか」

「そんなことってどんなこと」

「え。ヒナタくん、そこ突っ込む? ていうか脛大丈夫?」

「痣になりそうだから何とかしてよ」

「ええ!?」

「舐めたら治癒できるとかないの宇宙人」

「そんな無茶な……。宇宙人でも無理だわさ」


 ふっと笑った彼は「冗談だよ」と流し目。それにほっと小さく息をつくと同時、『なんでそんないちいちかっこいいんだバカヤロー!!』って、ちょっとだけ叫びながらその辺走り回りたくなった。
 ……やめてくれ。いろんな意味で。君はわたしを連行したいのか。


「……まあ、大丈夫」

「え!? 何が!? 連行が!? 警察が!?」

「……だいたい何考えてたかわかったけど違う」


 お。それだけでわかったのか。さすがです。頭が上がりません。
 ははあ~っと、連行されない程度に平伏していると上から、「言ってくれるだけ嬉しいから」とぼそり。見上げたけれど、もう発信源はそっぽを向いていて。しかもテクテク歩いていて。

 そんな少し前屈みで歩く彼の横へ、ひょこっと並ぶ。


「言ってないけどね? 足出てるけどね? ドMだね」

「うるさいっ」


 やっぱり照れてた彼に笑いながら、一応保護者代表のキク先生の声にやっとこさ、わたしたちはぞろぞろと動き出した。


「おっと! 点呼途中だったじゃないか!」

「え。まだ続いてたの、それ」

「うん! 1番はわたしでー、2番がシント、3番がヒナタくんでしょ? 4番がキサちゃんで、5番がユズちゃんってきてたから……呼ばれた人は大きな声で返事をしましょー! 6番! まだまだ甘党まっしぐらさーん!」

「え。あ、葵。名前呼ぶんじゃないのか……?」

「返事はー? 今日は欠席かなー?」

「……ハーイ。あきら、いまーす……」


 うむ。ついでに健康チェックしとこうか。アキラくん、今年はおねむじゃありませんっと。ちょっと悲しそうなだけです、っと。


「よし! 次は……はい。7番カナデくん、っと」

「なんで!? アオイちゃんなんで!? なんで俺の扱い一段と酷くなってるの!?」

「ははっ。それじゃあ、純情まっしぐらさーん?」

「……はあ。はーい。かなで、いますよー……」

「かなくんどんまい!」


 カナデくんは……突っ込み疲れ。その他異常なし。通常運転っと。
 頭の中にそんなメモを残しながら、ぞろぞろと今年もお世話になる旅館へ。お次は……ちょいと後ろだな。