「……今アオイちゃん何中?」

「罰ゲーム中」

「え。い、一体何してるの、あれ」

「オレへの愛を撮ってる」


 よくわからなかった。愛って撮れるのかな、そもそも。
 完全な惚気だけど……でも、それを受け止められるようになってしまった自分に軽く自嘲。


「それ撮ってもらって、ヒナくん一体どうするの?」

「見たいって言っても絶対見せてあげない」


 いやいや……。自分にじゃないならそれ聞いても虚しいだけだから。
 それ見て得するの、本当に君しかいないよ? さすがのアオイちゃんだって、絶対恥ずかしいだろうなあ。


「それをね。毎日見て、聞いて。……泣くんだ」


 ――……え?


「絶対、泣くと思う。みっともないくらい、目腫らしてさ」


 とてもとても、やさしい顔だった。俺は、見たことがないくらい。……でも。どうしてそんな――――。


「……え? いざこざ?」

「らしいよ。海の家の方」

「女の子が絡まれてるんだってー。ポニテの~」

「え。そうなの? 店の人は?」

「それが、ガラの悪い男が五人くらいいるらしくて、他のお客さんもいるから下手に手が出せないでいるんだとか」

「えっ、それってヤバくない? 警察呼んだ方が……」


 通りすがりの女の子たちのそんな声に、ハッと我に返る。


「――――っ!」

「カナ!!」


『女の子が絡まれてるんだってー。ポニテの~』


 気付いたときにはもう、俺は地を蹴って駆けだしていた。